サウザンド・AIランド
「以上でチャプター1の質問を終了します。質問はまだまだ続きますので、いつでも中断できます。続けますか。」
会社での仕事に比べれば楽なものだ。俺はもう少し続けることにした。
「では引き続き、チャプター2に移ります。」
チャプター2は動画を見て次の行動を予測するケーススタディだった。最初の動画は待ち合わせのようで彼女が先に着いて彼氏を待っているところから始まり、10分程遅れて彼氏が現れ、そこで彼氏はどういう言葉を掛けるか選択するものだった。あるあるのシチュエーションとはいうものの、俺には経験がなく、三択のどれを選ぶべきか少し迷ったが、どうせ正解はなかろうと思い、セリフを選んだ。
「ごめん、待った?」
いつも通り、すぐに次の動画に移る。何十本動画を見ただろうか。気づけば日付が変わっていた。俺は中断を告げ、翌日に再開することにした。AIは多量の学習が必要だというのは理解しているが、いったいいつまで続くのだろう。
次の日も、また次の日も動画によるケーススタディが続いた。そして1週間が過ぎたころ、俺はたまらくなってAIコンシェルジュの千に質問してみた。
「途中で悪いんだけど、これはチャプターいくつまであるの?」
「はい、最低でも千問ほどの質問は用意していますが、いくつまでというものはございません。ユーザー様の仮想モデルが確定できるまで続きます。」
先は見えないということか・・・。しかし、俺には会社でさんざん鍛えられた、いつまでも続くクレームを耐え忍ぶ力がある。そして、もう一つ、他に特にすることがないという残念な状況もある。まあ、時間が掛かるだけで大変ということはないので、俺はとことん付き合ってみることにした。
そして、アプリのダウンロードから3週間ほど経った時、突然質問が終了した。
「以上で質問は終了です。お疲れ様でした。審査の結果、入会許可となりました。おめでとうございます。」
AIコンシェルジュの千は満面の笑みを浮かべて拍手し、画面には花吹雪が舞っている。そんなにめでたいことなのか、今からがマッチングの本番なのでは・・・。
「では、お相手のご紹介をさせていただきます。お名前は・・・」
モニターには、際立って美人というわけではないが、清潔感のある、中肉中背の女性が表示されていた。
「学歴は・・・、お仕事は・・・、ご趣味は・・・、性格は・・・」
延々と説明が続いた。いきなりこのような個人情報を出してきていいのだろうか。聞いている方が心配になる。成婚率100%と謳っているところを見ると、絶対の自信を持っているということなのか。
「では、最後にお客様とのマッチング率ですが53%です。」
「えっ、たった53%・・・」
思わず俺は口に出してしまった。さんざん質問して俺の仮想モデルを作ったはずなのに、53%とはどういうことだろう。もっと、ばっちり相性の良い相手が居そうなものだが・・・。俺がその程度の男ということなのだろうか・・・。
「お客様、確かに53%はそれほど高いマッチング率ではございません。しかし、お客様は3週間にも及ぶ質問に真剣に取り組んでこられました。また、お相手の方も同様です。ご心配には及びません。お二人の100%の成就を保証いたします。」
要は、結婚は忍耐力ということらしい。俺はこのアプリが100%成婚率を謳える理由が分かったような気がした。
おしまい
会社での仕事に比べれば楽なものだ。俺はもう少し続けることにした。
「では引き続き、チャプター2に移ります。」
チャプター2は動画を見て次の行動を予測するケーススタディだった。最初の動画は待ち合わせのようで彼女が先に着いて彼氏を待っているところから始まり、10分程遅れて彼氏が現れ、そこで彼氏はどういう言葉を掛けるか選択するものだった。あるあるのシチュエーションとはいうものの、俺には経験がなく、三択のどれを選ぶべきか少し迷ったが、どうせ正解はなかろうと思い、セリフを選んだ。
「ごめん、待った?」
いつも通り、すぐに次の動画に移る。何十本動画を見ただろうか。気づけば日付が変わっていた。俺は中断を告げ、翌日に再開することにした。AIは多量の学習が必要だというのは理解しているが、いったいいつまで続くのだろう。
次の日も、また次の日も動画によるケーススタディが続いた。そして1週間が過ぎたころ、俺はたまらくなってAIコンシェルジュの千に質問してみた。
「途中で悪いんだけど、これはチャプターいくつまであるの?」
「はい、最低でも千問ほどの質問は用意していますが、いくつまでというものはございません。ユーザー様の仮想モデルが確定できるまで続きます。」
先は見えないということか・・・。しかし、俺には会社でさんざん鍛えられた、いつまでも続くクレームを耐え忍ぶ力がある。そして、もう一つ、他に特にすることがないという残念な状況もある。まあ、時間が掛かるだけで大変ということはないので、俺はとことん付き合ってみることにした。
そして、アプリのダウンロードから3週間ほど経った時、突然質問が終了した。
「以上で質問は終了です。お疲れ様でした。審査の結果、入会許可となりました。おめでとうございます。」
AIコンシェルジュの千は満面の笑みを浮かべて拍手し、画面には花吹雪が舞っている。そんなにめでたいことなのか、今からがマッチングの本番なのでは・・・。
「では、お相手のご紹介をさせていただきます。お名前は・・・」
モニターには、際立って美人というわけではないが、清潔感のある、中肉中背の女性が表示されていた。
「学歴は・・・、お仕事は・・・、ご趣味は・・・、性格は・・・」
延々と説明が続いた。いきなりこのような個人情報を出してきていいのだろうか。聞いている方が心配になる。成婚率100%と謳っているところを見ると、絶対の自信を持っているということなのか。
「では、最後にお客様とのマッチング率ですが53%です。」
「えっ、たった53%・・・」
思わず俺は口に出してしまった。さんざん質問して俺の仮想モデルを作ったはずなのに、53%とはどういうことだろう。もっと、ばっちり相性の良い相手が居そうなものだが・・・。俺がその程度の男ということなのだろうか・・・。
「お客様、確かに53%はそれほど高いマッチング率ではございません。しかし、お客様は3週間にも及ぶ質問に真剣に取り組んでこられました。また、お相手の方も同様です。ご心配には及びません。お二人の100%の成就を保証いたします。」
要は、結婚は忍耐力ということらしい。俺はこのアプリが100%成婚率を謳える理由が分かったような気がした。
おしまい
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