サウザンド・AIランド

サウザンド・AIランド
                      -修.

 「成婚率100%だって、そんなはずはなかろう・・・」
 男、しかも、理系オタクだらけの職場には出会いがあろうはずもなく、はたまた会社の外で彼女を作るような容姿も才能も財力も持ち合わせておらず・・・。結果は言うまでもない、35歳独身エンジニア。親からは都会で暮らしているのに、彼女の一つも作れないのかと言われ続け・・・。

 いや別に彼女なんかいらない、と、うそぶいてみても、ただむなしく。ダメ元でマッチングアプリに手を出してみることにしたのだが・・・。しかし、よしんば、うまくマッチングできたとしても、その後はどうなのだろう。女性と何を話せばいいのか、デバッグしていたら、ソースをいじりすぎで別のバグを作っちゃって、ハハハ、なんて話で盛り上がるだろうか。

 そもそも「100%」なんて数字が怪しい。100%なんて数字を軽々しく使うとはけしからん。100%バグはありません、なんてクライアントに言おうものなら瞬殺されるぞ・・・・。と思いつつも、少しは信じてみようという気にもなってきた。もしかすると、こんな俺もうまくマッチングしてくれるのではなかろうか。

 マッチングアプリ「サウザンド・AIランド」。ダウンロード画面には幸せそうな二人が寄り添っている。釣りに違いない。きっと後でたんまり課金が必要になるのだろう。人間長く生きると、疑い深くなるものだ。しかし・・・、俺は意を決してダウンロードボタンを押した。まぁ、無料だし、「意を決する」は言い過ぎか。

 ほどなくアプリが立ち上がると、モニターにいきなりすごい美人の女性が出てきて話し出した。ダウンロードしたのが女性なら男性の画像が出るのだろうか・・・。いや、そんなことはどうでもいい。待ち構えていたように出てきたが、どこかで常に何人か待機しているのだろうか。
 「この度はダウンロードいただき、大変ありがとうございました。AIコンシェルジュの千(せん)と申します。」
 リアルすぎる。本物の人間かと思った。AIの進展は目を見張るものがある。そのうちAIと付き合うような時代になるのではないだろうか。いやいや、気を散らしている場合ではない。話は続いている。
 「このサウザンド・AIランドは、ユーザー様に色々な質問をすることで、ユーザー様の仮想モデルを構成し、他のユーザー様の仮想モデルとのマッチング率を分析していくという仕組みでございます。」
 ん、仮想の俺が仮想彼女と付き合ってみて、うまく行くかどうか見るということかな。
 「このため、かなりのお時間を頂いて色々なケースを想定した質問を差し上げます。すべての質問にお答えいただいた上で入会審査を開始しますので、お付き合いください。もしよろしければ、質問を開始しますがご都合はいかがでしょうか。」

 幸い昨日、ビッグプロジェクトが多量のバグを抱えつつもなんとかリリースでき、今からは残業調整で早く帰らないといけない日々が続く。少し暇になったからこそ、うまくいくかどうかわからないアプリをやってみるかという気になったのだ。
 「いいよ。」
 俺は音声で答えた。
 「ありがとうございます。では、早速質問を開始します。深く考える必要はありません。直感で回答してください。」
 画面が切り替わり、ABCの枠に3人の女性の写真が表示された。かわいい系、美人系、ラフ系とタイプが違う。どうやら、俺の女性の好みを確定しようとしているようだ。
 「A」
 俺は即座に答えた。すると、すぐに画面が切り替わり、別の3人の女性の写真が続いた。何十人かの女性を選択した後、ようやく質問の内容が変わった。今度は、同じ女性が、ショート、セミロング、ロングと髪型を変えて表示された。
 「B」
 また色々な髪形が続き、次には同じ女性で服装が違う写真が続いた。既に2時間近く女性の選択ばかりしている。これはいつまで続くのだろうか、そう思った時、再びAIコンシェルジュの千の画像に戻った。
1/2ページ
スキ