何かの方程式

 「船長、大変です。」
 「今度は何だ。今回の航海はトラブル続きだな。」
 「えー、それがなんとも言い難く・・・」
 部下は言い淀んだ。
 「いったい、どうしたんだ?」
 「はい、自分でも信じられないのですが、第3コンテナ内に女神が現れました。」
 「女神だって? スタイル抜群のすごい美人の密航者が現れたとか・・・」
 「いえいえ、文字通り、女神です。いや正確には女神にしか見えない何者かです。」
 「はぁ、何を言っているんだ。」
 船長は、部下が指さすモニターを見た。
 「えっ・・・」
 そこには、ゆったりとした着物をまとい、髪や首や手首に金の宝飾品をまとい、微笑みを浮かべた女性が30cmほど宙に浮かんでいた。そしてどこからか金色の光がさしていた。
 「どう見えます。船長に報告する前に幻ではないかと思って、仲間同士で確認したのですが、皆違った姿見えるようなんです。どうも出身地によって見え方が違うようで・・・」
 「そうなのか・・・」
 船長はあっけに取られてモニターを見つめていた。
 「これはフェイク画像ではないのか?」
 「違います。ちなみにずっと録画しているんですが、録画の中には映っていません。リアルタイムでしか見えません。しかも人によって見え方が違います。こんなことは技術的に不可能です。これは女神に違いありません。」
 「少なくとも人智を超えた存在には違いないみたいだな・・・」
 「どうしましょう。そろそろ第3コンテナの切り離しシーケンスに入りますが・・・」
 「うむ。いや、これが女神なのか、何なのか分からないが、コンテナ内のことは我々には関係ない。切り離しシーケンスを始めてくれ。」
 「承知しました・・・、女神を切り離します。」

 もし女神が幸運の女神であれば植民星には幸福が訪れるだろう。しかし、女神は幸運をもたらすとは限らない。もしかすると最悪の災厄をもたらすかも知れない。いずれにしろ、我々にできることはコンテナを無事に送り届けることだけだ。船長は、切り離され、逆噴射を始めた第3コンテナをいつまでも見つめていた。

おしまい
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