何かの方程式

 それから数週間後。
 「船長、大変な事態が起こりました。密航者です。」
 「なんだと、とうとう密航者が出たか。自分が厳しい処分をする日が来ようとは・・・。」
 船長になってから十数年、最も遭遇したくない事態に遭遇してしまった。まさか自分が密航者の処分をすることになろうとは・・・。
 「いったい、どこに潜んでいたんだ。」
 「はい、第2コンテナです。」
 「第2コンテナ? 本船じゃないのか?」
 「本船じゃありません。」
 心なしか、船長は胸をなでおろしたように見えた。
 「どうして判った?」
 「はい、船長。第2コンテナの切り離し前の内部映像を確認していたとき、コンテナ内の通信機より救難要請があったんです。要請によると、どこかの国の王子が戦争を避けるために亡命を企てたようで、親衛隊10名と共に貨物の中に潜んでいたそうです。」
 「それで、なんで救難要請になるのだ? じっと潜んでおけば何事もなく植民星に到着しただろうに・・・」
 「それが、亡命を察知した反対勢力の戦闘員も何名か密航していたらしく、現在、第2コンテナ内が戦闘状態になっているそうです。それで、形勢が悪くなったので本船へ避難したいと言っています。」
 「あー、事情は分かった。しかし、本船への非難は無理だな。冷たいようだが、密航者に人権はない。『人命にかかわる』とはあくまでも旅客の人命に限られる。密航者は生きていようと死のうと関係ない。ましてや、コンテナ内のごたごたは我々の知るところではない。要請は聞けないと回答して、切り離しシーケンスを続けろ。」
 第2コンテナは戦闘状態のまま切り離され、植民星へと着陸していった。
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