何かの方程式

何かの方程式
                      -修.

 「船長、大変なことになっています。」
 全長2000mを超える大型星間貨物船のブリッジに緊張が走った。
 「どうした、トラブルか。」
 「はい、あと1時間で切り離しシーケンスを開始しますので、切り離し前の第1コンテナの内部カメラの映像を確認していたのですが、2フロア分の貨物がずたずたに切り裂かれていることが判りました。」
 「どういうことだ?」

 貨物船は、直径200m、長さ200mの円筒状、つまりはドラム缶のような形状のコンテナを直列に9個抱えており、さながら、ウナギのような形をしている。そして、目的の植民星に近づくとコンテナを1つずつ分離する。分離されたコンテナは、自動制御により、逆噴射で速度を落としながら植民星に着陸し、物資を届けるしくみだ。ちなみに、すべてのコンテナを分離し終わると、推進装置があるヘッダーと最後端のセンサーユニットの間に、直線状のフレームとそこからコンテナを支える円弧上のアームだけが残り、魚を食べた後の骨のように見える。このため、この輸送船は「スケルトン貨物船」と呼ばれていた。

 コンテナは、貨物だけでなく、旅客も運ぶことができるよう標準化されており、内部は与圧され、生活可能な温度が維持されていた。そして、着陸後も、防災シェルターであったり、海水の淡水化施設であったり、製造工場であったりと、植民星の開拓に活用される。

 「船長、この画像を見てください。この自動機械みたいな奴が、片っ端から貨物を切り刻んでいっているようです。AI戦闘ロボットか何かでしょうか。」
 「なにぃ・・・」
 船長はじっと画像を見つめた。
 「いや、違うな。これは自動伐採機のようだ。原野を開拓するために、木々を伐採したり、草を刈ったりする奴だな。何かの拍子に起動して、貨物フロアの伐採を始めたってところだろうな、やれやれ・・・」
 「コンテナに入って止めますか。」
 「いや、知っていると思うが、コンテナは人命にかかわる一大事以外は封印されており、航行中は立ち入り禁止だ。貨物がかなり駄目になっているので植民星は困るだろうが、これはコンテナを仕立てた荷主の責任であって我々の責任ではない。気にせず、切り離しシーケンスを続けろ。それと早めに荷主に映像を送ってやってくれ。」
 「承知しました。」
 第1コンテナは一部破壊された荷物を載せたまま分離され、逆噴射を開始した。
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