【バランシング・ダンジョン】猪八戒

 やはりこれは飢え死にしかないなと思っていた矢先、俺は新たな敵に遭遇した。二本足で立つ豚。僧侶のような着物は着崩れており、大きな腹が丸出しになっている。そして手には大きな熊手のような武器を持っている。

 「猪八戒・・・」
 マップに階段が表示されていないところを見るとフロアボスではないらしい。中ボスということだろうか。まだ体力はあるので倒すことはできるだろうが、いよいよ満腹度が持たないだろう。かといって逃げるのも難しそうだ。

 俺は迷わず「戦う」を選択した。猪八戒は想像通りかなり強く、雑魚キャラの数倍のターンを要したが無難に倒すことができた。そして、猪八戒はなんと「肉塊」をドロップしていった。

 「やったぁ!」
 これは広大なフロアでプレイヤーが飢え死にすることを避けるために、運営側が用意した救済措置に違いない。俺はすぐに肉塊を「食べる」を選択した。タンパク質のためか満腹度バーは120%くらいに達している。これで飢え死には避けられそうだ。俺は意気揚々とダンジョンを進み始めた。

 そして、雑魚キャラを数回倒し終えたころ、ステータス表示が真っ赤に変わっていることに気づいた。
 「ん、どうした・・・」
 ステータスウインドウを開くと、そこには初めて見る表示があった。
 「食中毒だ。早く毒消し草を飲まないと危ない。」
 ん、肉にあたったということだろうか。そんなことがあるだろうか・・・。

 しかし、俺はふと思い立った。猪八戒は豚の妖怪だ。だとすればドロップした肉塊は豚肉・・・、豚肉は生では食えない・・・、そういうことか。救済などというものを期待した俺が馬鹿だった。このダンジョン、そんなに甘いはずがない・・・。

 すでに毒消し草は食べてしまっており、俺は満腹度と体力のバーがみるみる短くなっていくのを見つめるしかなかった。

おしまい
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