【バランシング・ダンジョン】猪八戒

【バランシング・ダンジョン】猪八戒
                      -修.

 「まずい。このままでは飢え死にする・・・」

 この「バランシング・ダンジョン」にはいくつか特徴がある。まずは、すべての装備や持ち物に重量の概念があり、重たい装備は容赦なく体力を奪う。強力な技や魔法も同じだ。十分に食事をとって、体力を確保しつつ攻略を進めないといけない。

 満腹度が高ければ歩いていても徐々に体力が回復するが、満腹度が低いと歩くたびに体力が削がれ、到底戦えない体力となってしまう。他にも武器の劣化の概念や、レベル上げの難しさなど、究極にシビアなダンジョン攻略はまさに冒険シミュレーターと言えた。

 今まで俺は色々な職業を試してきたが、どれももう一つで毎回死んでしまっては振出しに戻っていた。そこで、今回は最もオーソドックスな戦士の職業を選び、これまたオーソドックスな剣と盾の装備でダンジョンに挑むことにした。そして、ソロプレイ攻略の地下10階中、5階までたどり着いていた。

 このフロアで俺は2つ間違いを犯していた。

 フロアボスを倒すと次の階層へ下りる階段が現れ、その階段を下りた先には階段町がある。この階段町には宿屋や道具屋や道場があるのだが、宿屋を発つとき、宿屋の主人から、珍しく「お弁当に」とパンをもらった。この異例な対応から、フロアが広大であることを予想すべきだった。これが1つ目の間違いだ。

 そして、俺は通常の1フロアの攻略にはパンを1個持っていれば満腹度が維持できることから、宿屋でパンがもらえてラッキーぐらいに思い、追加のパンを買わなかった。これが2つ目の間違いだ。

 通常なら1時間もあれば1フロア攻略できるところ、俺はすでに1時間30分近く攻略を進めている。自動で生成される通路マップを見てもまだ3分の1くらいの空白がある。そしてパンはずいぶん前に食べてしまい、既に満腹度を示すバーの長さは半分を切っている。

 少しは足しになるかと思い薬草も毒消し草も食べてみたが、一瞬体力が回復するだけで、満腹度にはほとんど影響がなかった。このままでは満腹度が0になり、体力が回復できず死んでしまう。フロアボスにたどり着けるだろうか、もしたどり着いたとしても戦う体力は残っていないだろう。かといって、階段町に戻るにも雑魚キャラとの戦いが避けられないため満腹度が足らない。

 これだけフロアが広ければ、途中にキャンプのような休憩所や、パンが落ちているといった救済措置があってもおかしくないところだが、今のところ巡り合っていない。

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