静かな訪問者
といったことを考えていると、突然、ホテルのサイレンが鳴り出し、同時に館内放送が流れた。
「ご宿泊のお客様にお伝えします。現在、当ホテルは原因不明の揺れに襲われております。お客様は非常階段より直ちに避難してください。繰り返します・・・」
俺は、丁度身支度を終えたところだったので、すぐに部屋を出た。廊下には同じようなビジネスマン数人が居た。俺は廊下を歩いて建物の外に付けられた鉄製の非常階段を下りて行った。
そして地面に降り立って、再び昨日の感覚が戻ってきた。なんだか、地面がふわふわする。酔っぱらっていたせいではなかったようだ。クッション性を持たせた舗装なのだろうか。ゴムが混ぜてあるとか・・・。
ホテルの従業員の誘導により、俺と他の客たちは隣の駐車場の端っこに退避した。そしておもむろにホテルを見ると、ホテルは確かにゆっくりした周期で揺れている。大地震が起こると高層ビルがこのような揺れ方をするのは見たことがあるが、たかが地方都市のホテルである。階数は5階しかない。同じような揺れ方をするはずがないのだが・・・。
そういえば、テレビで重大発表があると言っていたが、この揺れと関係あるのだろうか。俺はすぐにスマホでネット中継を探した。すぐに見つかった中継では先ほどの男性が発表を始めたところだった。
「・・・隕石のサンプルを分析しました結果、我々は初の地球外生命体を発見いたしました。この地球外生命体は、地球上の炭素系生物とは異なり、ケイ素系生物であります。詳しいことは未だ調査中ですが、いわゆるカビのような構造を持つ生物で、岩石中に菌糸を伸ばし、岩石を養分として成長していくと予想しております。」
岩石を食うってことなのか、俺には理解ができなかった。男性は続けていた。
「・・・岩石内部が菌糸だらけになりますと、岩石全体が弾性体になるようです。このため衝突した隕石は、言ってみればゴムボールのような状態となっていたため、被害がほとんど生じなかったと予想されます。」
男性は得意げに発表を続けていたが、俺には「ゴム」という言葉が引っ掛かってしかたなかった。もしかして、ホテルの建物全体がゴムのようになっているのではないだろうか。
俺が、ゆっくり揺れているホテルを再度注意深く見てみると、1階の外壁が少し膨らんでいるようにも見える。そうだ、この地面のふわふわ感ももしかすると・・・。男性は隕石が菌糸だらけだと言っていたが、カビのような生物なら胞子はないのだろうか。もしかすると、隕石は大気圏中に胞子をばらまきながら飛んできたのではないか。だとすると、この辺りが、いや地球全体がこのケイ素系生物に取って代わられる日も遠くないかも知れない・・・。
俺には細かい未来を予測することができなかったが、文明あるいは人類に重大な影響を及ぼすことになるのは間違いないだろう。しかし、俺が何か回避策を取れるわけでもない。俺は、ホテルの外に設けられた仮フロントで精算を済ませ、ファストフード店へと向かった。
おしまい
「ご宿泊のお客様にお伝えします。現在、当ホテルは原因不明の揺れに襲われております。お客様は非常階段より直ちに避難してください。繰り返します・・・」
俺は、丁度身支度を終えたところだったので、すぐに部屋を出た。廊下には同じようなビジネスマン数人が居た。俺は廊下を歩いて建物の外に付けられた鉄製の非常階段を下りて行った。
そして地面に降り立って、再び昨日の感覚が戻ってきた。なんだか、地面がふわふわする。酔っぱらっていたせいではなかったようだ。クッション性を持たせた舗装なのだろうか。ゴムが混ぜてあるとか・・・。
ホテルの従業員の誘導により、俺と他の客たちは隣の駐車場の端っこに退避した。そしておもむろにホテルを見ると、ホテルは確かにゆっくりした周期で揺れている。大地震が起こると高層ビルがこのような揺れ方をするのは見たことがあるが、たかが地方都市のホテルである。階数は5階しかない。同じような揺れ方をするはずがないのだが・・・。
そういえば、テレビで重大発表があると言っていたが、この揺れと関係あるのだろうか。俺はすぐにスマホでネット中継を探した。すぐに見つかった中継では先ほどの男性が発表を始めたところだった。
「・・・隕石のサンプルを分析しました結果、我々は初の地球外生命体を発見いたしました。この地球外生命体は、地球上の炭素系生物とは異なり、ケイ素系生物であります。詳しいことは未だ調査中ですが、いわゆるカビのような構造を持つ生物で、岩石中に菌糸を伸ばし、岩石を養分として成長していくと予想しております。」
岩石を食うってことなのか、俺には理解ができなかった。男性は続けていた。
「・・・岩石内部が菌糸だらけになりますと、岩石全体が弾性体になるようです。このため衝突した隕石は、言ってみればゴムボールのような状態となっていたため、被害がほとんど生じなかったと予想されます。」
男性は得意げに発表を続けていたが、俺には「ゴム」という言葉が引っ掛かってしかたなかった。もしかして、ホテルの建物全体がゴムのようになっているのではないだろうか。
俺が、ゆっくり揺れているホテルを再度注意深く見てみると、1階の外壁が少し膨らんでいるようにも見える。そうだ、この地面のふわふわ感ももしかすると・・・。男性は隕石が菌糸だらけだと言っていたが、カビのような生物なら胞子はないのだろうか。もしかすると、隕石は大気圏中に胞子をばらまきながら飛んできたのではないか。だとすると、この辺りが、いや地球全体がこのケイ素系生物に取って代わられる日も遠くないかも知れない・・・。
俺には細かい未来を予測することができなかったが、文明あるいは人類に重大な影響を及ぼすことになるのは間違いないだろう。しかし、俺が何か回避策を取れるわけでもない。俺は、ホテルの外に設けられた仮フロントで精算を済ませ、ファストフード店へと向かった。
おしまい
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