静かな訪問者

静かな訪問者
                      -修.

 「少し飲みすぎたな・・・」
 出張先のF市の取引先に前泊すると伝えたところ、是非夕食を御一緒にと言われ、のこのこ付いて行ったのがまずかった。1週間ほど前、あちこちで目撃されて大騒ぎとなった火球がF市の北側の山腹に衝突したのに、大した被害が出なかったお祝いと称して夕食は奢ってもらうわ、二次会のスナックでは歌いまくるわで、足元がおぼつかない。頭も少しふらふらしていて、なんだか道路がふわふわしているように感じる。

 俺は歩いて数分のホテルにたどり着くと、目覚ましのアラームをセットし終えるやいなや、シャワーも浴びずにベッドに転がり込んだ。取引先はすぐ近くなので、明日少し早めに起きれば準備する時間は十分に取れる。

 翌朝、俺は控えめなアラーム音で目を覚ますまで夢を見ていた。大荒れの日本海をフェリーに乗って旅する夢だ。フェリーは長い周期で揺れ、俺が見つめる窓には時折波しぶきが掛かっていた。なぜ、フェリーの夢なんて見たのだろう。

 俺はシャワーを浴びるべく立ち上がって、自分がふらつくのを感じた。
 「やばい・・・」
 まだ酒が抜けきっていないのだろうか。俺は壁を伝いながら移動してシャワーを浴び、スーツに着替えた。朝食はホテルの近くのファストフードで済ませる予定だ。そしてスケジュールを確認するため椅子に腰かけたが、まだふらつきが残っていた。

 これはもしかすると、俺が揺れているのではなく、地震なのではないだろうか。それにしては揺れの周期が大きいが・・・。俺は地震速報が出ていないか確認するため、部屋のテレビを点けた。

 テレビでは初老の男性が原稿を手にして何かを発表する準備をしているようだった。
 「あと10分で、F市に衝突しました隕石について、科学技術・学術政策局、局長より重大発表が行われます。」
 女性のアナウンサーが説明していた。F市ってここじゃないか。何があったのだろうか。いや、待て。地震速報は流れていないようなので、ふらつきを感じるのはやはり俺が原因なのだろうか。
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