【異星人外交官】原子力用語辞典
その後、異星人からの祝辞が10分程続いた。
「・・・そして最後に、我々から地球人に対して、要求事項がある。それは、$%&」#=を、&%#)=¥*して欲しいということだ。」
「ん?」
所長は思わず声を上げた。そしてマイクをミュートし、部下に話しかけた。
「なんだって?」
「分かりません。最後の要求のところが意味不明でしたね。」
「コンピューターの分析はどうだ?」
「分析失敗って出ています。」
「仕方ないな。もう少し説明してもらうか。」
所長は再びマイクに向かって話しかけた。
「すまないが、最後の要求事項について、少しわかりやすく解説してくれないだろうか。」
「わかった。つまり我々の要求事項は、§〇Φ@@〶々が、ㄤㄖㄘאּであるために、ᅱ₩ᄇᄈ仝ゞ℃を、£$*∞≧ⅤⅤしてくれないかということだ。」
「地球側で検討するので少し時間をいただきたい。」
所長は再びマイクをミュートした。
「分からない単語が増えてしまったぞ。コンピューター分析は?」
「完全にお手上げです。何を言っているのかさっぱり分かりませんね。言葉は地球公用語で極めて明瞭なのに、いったいどういうことなのでしょうね。」
「うむ、もしかするとこれは原子力用語辞典状態になっているのかもしれないな。」
「それ、なんですか?」
「君は知らないかな。原子力用語辞典で1つの単語を引くと、その説明には数倍の数の意味不明の単語が出てきて、さらにそれらの単語を引くともっと多くの意味不明の単語が出てきて、結局、いつまで経っても最初の単語の意味が分からないというやつだ。」
「どういうことですか?」
「そうだな。じゃあ『プリクラでポージングしてる様子をストリーズにUPしたらバズっちゃって、いいね爆上がり』ってのを、江戸時代の町娘に説明してみてごらん。」
「え、なんですか。まずはプリクラですよね。『カメラで撮影した顔写真を自動的にプリントしてくれる機械』ですかね。」
「君、『カメラ』も『プリント』も江戸時代にはない単語だろう。もしかしたら『顔写真』、『自動的』、『機械』も江戸時代の町娘には通じないだろうな。江戸時代だと、手書きの人相書きが木版印刷のかわら版で出回っていたくらいだ。」
「つまり所長が言いたいのは、異星人と我々の技術レベルの差が大きすぎて、我々は単語の意味が分からないってことなのですね。」
「たぶんな。文化レベルの差も関係するかもしれん。先方に言ってみるか。」
所長は再びマイクを手に取った。
「異星人よ。待たせて済まない。そちらからの要求事項について分析したが、地球側の技術レベルや文明レベルが低いために、我々にはそちらの要求事項が理解できないようだ。」
異星人はしばらく沈黙した。
「地球人の諸君。君たちの見解を理解した。我々内部で地球人と我々の文明レベルの比較を行ったところ、要求するタイミングが二千年ほど早すぎたようだ。最後の要求事項は撤回し、二千年後に地球の発展度合いを見て改めて要求するようにする。」
かくして要求は取り下げられ、異星人の表敬訪問は無事に終了し、宇宙船は音もなく離陸していった。所長は、江戸時代の町娘にプリクラが何かを一生懸命説明するカニの姿を思い浮かべながら宇宙船を見送った。
おしまい
「・・・そして最後に、我々から地球人に対して、要求事項がある。それは、$%&」#=を、&%#)=¥*して欲しいということだ。」
「ん?」
所長は思わず声を上げた。そしてマイクをミュートし、部下に話しかけた。
「なんだって?」
「分かりません。最後の要求のところが意味不明でしたね。」
「コンピューターの分析はどうだ?」
「分析失敗って出ています。」
「仕方ないな。もう少し説明してもらうか。」
所長は再びマイクに向かって話しかけた。
「すまないが、最後の要求事項について、少しわかりやすく解説してくれないだろうか。」
「わかった。つまり我々の要求事項は、§〇Φ@@〶々が、ㄤㄖㄘאּであるために、ᅱ₩ᄇᄈ仝ゞ℃を、£$*∞≧ⅤⅤしてくれないかということだ。」
「地球側で検討するので少し時間をいただきたい。」
所長は再びマイクをミュートした。
「分からない単語が増えてしまったぞ。コンピューター分析は?」
「完全にお手上げです。何を言っているのかさっぱり分かりませんね。言葉は地球公用語で極めて明瞭なのに、いったいどういうことなのでしょうね。」
「うむ、もしかするとこれは原子力用語辞典状態になっているのかもしれないな。」
「それ、なんですか?」
「君は知らないかな。原子力用語辞典で1つの単語を引くと、その説明には数倍の数の意味不明の単語が出てきて、さらにそれらの単語を引くともっと多くの意味不明の単語が出てきて、結局、いつまで経っても最初の単語の意味が分からないというやつだ。」
「どういうことですか?」
「そうだな。じゃあ『プリクラでポージングしてる様子をストリーズにUPしたらバズっちゃって、いいね爆上がり』ってのを、江戸時代の町娘に説明してみてごらん。」
「え、なんですか。まずはプリクラですよね。『カメラで撮影した顔写真を自動的にプリントしてくれる機械』ですかね。」
「君、『カメラ』も『プリント』も江戸時代にはない単語だろう。もしかしたら『顔写真』、『自動的』、『機械』も江戸時代の町娘には通じないだろうな。江戸時代だと、手書きの人相書きが木版印刷のかわら版で出回っていたくらいだ。」
「つまり所長が言いたいのは、異星人と我々の技術レベルの差が大きすぎて、我々は単語の意味が分からないってことなのですね。」
「たぶんな。文化レベルの差も関係するかもしれん。先方に言ってみるか。」
所長は再びマイクを手に取った。
「異星人よ。待たせて済まない。そちらからの要求事項について分析したが、地球側の技術レベルや文明レベルが低いために、我々にはそちらの要求事項が理解できないようだ。」
異星人はしばらく沈黙した。
「地球人の諸君。君たちの見解を理解した。我々内部で地球人と我々の文明レベルの比較を行ったところ、要求するタイミングが二千年ほど早すぎたようだ。最後の要求事項は撤回し、二千年後に地球の発展度合いを見て改めて要求するようにする。」
かくして要求は取り下げられ、異星人の表敬訪問は無事に終了し、宇宙船は音もなく離陸していった。所長は、江戸時代の町娘にプリクラが何かを一生懸命説明するカニの姿を思い浮かべながら宇宙船を見送った。
おしまい
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