N博士のドラゴン討伐

 「君、今回の実験装置も見てくれたまえ。」
 エージェントは考えを中断され、博士の指さす方に置かれた実験装置を見つめた。
 「ドラゴン・・・?」
 「左様。なにせ相手が何者かわからないと手の打ちようがないからな。そこで、まずは相手を観察することにした。君、以前、猫ちゃんの活動を観察するための猫型ロボットを作ったのを覚えているだろう。」
 「あー、猫というより黒豹の『ロデム』ですね。」
 「そうじゃ。あのロボットの観測装置をすべてこのメカドラゴンに移設した。そして重力制御装置とAIを組み込んで、空中で自律的にドラゴンを探させることにした。原子力電池で100年くらいは続けて調査ができる。もちろんリモート操作もできるようにしておる。目には目を、歯には歯を、ドラゴンにはメカドラゴンを、ということだ。」
 「なるほど・・・」
 エージェントは平静を装っていたが、心の中では、100年間無着陸で自律的に偵察する無人機なんて軍事国家から引く手あまただろうと思っていた。
 「で、君も来てくれたところで、早速、今から調査を開始する。」
 N博士がコンソールを操作すると、ドラゴンは音もなく飛翔し、ラボから外へ飛び出していった。

 「N博士、行ってしまいましたね。」
 「うむ。スタートは順調だな。今から調査が始まるが、結果がいつ出るかはわからん。なにせ相手はドラゴンだからな。君も今日はありがとう。また、何か結果が出れば連絡するから、また来てくれたまえ・・・」
 そのとき、コンソールから何か警告音のようなものがした。
 「おー、早速ドラゴンを発見したようだ。メカドラゴンのカメラ映像では、どうもドラゴンに追いかけられているようだな。よしっ、ならば!」
 N博士は忙しくコンソールを操作し始めた。
 「このまま、ワープ装置に誘導して、ドラゴンを異世界に帰そう・・・。ワープ装置開放。」
 その直後、N博士とエージェントの前を、メカドラゴンと異世界のドラゴンがものすごい勢いで次々と通り過ぎ、ワープ装置の入口へと入っていった。
 「ワープ装置閉鎖!やった、大成功だ。一気に解決できたな、ははは・・・」
 ラボにはN博士の喜びの声が響き渡った。

 一方、エージェントは投資家への説明の仕方に頭を抱えていた。なぜ、ドラゴンはメカドラゴンの後を追いかけたのか、アユの縄張り争いのようなものだろうか、それとも求愛、あるいは仲間と群れたいと思ったのか、そして、ドラゴンはなぜすんなりワープ装置に入っていったのだろうか。うなぎやどじょうのような細長い魚は、パイプのような狭い空間に入っていく性質があるが、異世界のドラゴンも同じような性質を持っていたということだろうか。N博士も言っていたとおり、何一つ確信が持てることはなかった。だが、ただ一つ言えることは、莫大な経費が掛かったに違いないメカドラゴンが異世界に行ってしまい、二度と帰ってこないということだった。エージェントは、異世界をドラゴンたちと共に悠々と飛び回るメカドラゴンを思い浮かべながら帰路に就いた。

おしまい
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