東京コンクリートグレイブ

東京コンクリートグレイブ
                      -修.

 「20年ぶりか・・・」
 俺は、羽田空港のボーディングブリッジを歩きながらつぶやいた。俺の勤める会社は福岡にある。コロナ禍以来、取引先との商談はリモート会議とメールになり、出張することはほとんどなくなっていた。今回は、取引先から是非対面で打ち合わせしたいとの要望があり、東京まで来ることになったのだ。

 空港の到着ロビーは思ったより人が少なかった。11時という中途半端な時間も関係するのだろうか。インバウンドで込み合っていると思っていたのだが・・・。以前、福岡の始発は7時だったが、出張自体が減っているせいか9時になっていた。早めに東京に入ってあたりをぶらぶらしようと思っていたのだが、これでは昼食を取って取引先に直行するしかなさそうだ。

 俺はフードコートで簡単に食事を済ませ、地下へと向かった。取引先へは京急といくつか地下鉄を乗り継げば、事務所のすぐ近くまで行ける。まあ、1時間あれば大丈夫だろう。待ち合わせの時間まで2時間近くあるので、取引先のそばの喫茶店ででも時間をつぶすつもりだ。

 「運休・・・」
 京急の改札の電光掲示板にはすべての列車に運休の文字が並んでいた。運が悪い。人身事故でもあったのだろうか。俺は即座にモノレールへ向かった。こちらは問題なさそうだ。モノレールは1両に数人しか乗っておらず、俺は人目を気にすることなく、ぼーっと周りの景色を眺めて過ごした。どこも人が少ない。モノレールと並走する道路の車の数さえもかなり少ない気がする。

 モノレールは浜松町に到着した。俺は地下鉄に乗り換えるため、地下への階段を下って行った。そして、駅の改札で立ちすくんだ。
 「また運休・・・」
 これは人身事故ではなく、信号の故障とか、電気設備の異常など大規模な障害が起こっているからに違いない。何の解決にもならないが、俺はスマホでニュース速報を検索した。しかし、これといったニュースは入っていなかった。

 俺は仕方なく山手線で取引先の近くへ向かうことにした。1回乗り換えれば取引先の事務所の近くのJR駅へ達することができる。そこから1kmくらい歩きになるが、時間つぶしに丁度いいだろう。

 山手線のホームは閑散としていた。電車を待っているのは数人といったところだ。東京ってこんなに人が少なかっただろうか。初夏とは言え、地球温暖化の影響で汗ばむ陽気となっているせいだろうか。そして、俺はふと気づいた。電車が来ない。かれこれ10分くらいホームに立っているが、まだ来ない。山手線って、ひっきりなしに電車が入って来るんじゃなかっただろうか。地下鉄の障害の影響があるのだろうか。そして15分ほど経ったころ、ようやく見慣れた電車が到着した。俺は、1回乗り換えを行い、取引先の最寄りの駅へ着いた。

 取引先は駅から通りをまっすぐ進んで、地下鉄の通っている幹線道路を超えたすぐ先にある。通りに出たが、やはり人影はほとんどなかった。やはり暑さのせいだろうか。都心から少し離れているとは言え、東京はどこに行っても人がごった返しているイメージだったのだが・・・。よく見ると、通り沿いの店もほとんどシャッターが下りていて開いている店がない。もし予定通り到着していたら、時間を持て余すところだった。いや、しかし、どこに行っても人がいない。どうなっているのだろうか。俺はあまりの人の少なさに疑問を抱きつつ、歩を進めた。
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