ビクトリーラーメンマンシリーズ第9弾 海洋宇宙船

ビクトリーラーメンマンシリーズ第9弾 海洋宇宙船

                           ―修.

 「甲斐くん、ちょっといいですか?」
 俺はパソコンから顔を上げ、課長の机の方を振り向いた。しかし、課長の机には誰もおらず、こちら向きに課長のリアルタイム画像を表示した大型のディスプレイが置いてあるだけだ。ディスプレイの上部にはカメラが付いており、課長には常に事務所内のリアルタイム画像が見えている。まあ、そこはお互いさまということだ。
 リモートワーク・・・。今日は、課長はどこで仕事をしているのだろうか。背景こそ自宅の部屋のように見えるが、実際はどこかのカフェでコーヒーでも飲みながら、まったりと仕事をしていることだろう。
 俺はほとんどの時間を宇宙船内で過ごしているため、課長とはいつもディスプレイ越しの会話だ。たまに事務所に戻った時くらいは直接顔を合わせたいものだが、これでは宇宙船での会話と変わらない。こんなことなら、俺自身が事務所に出向く必要もないのではないだろうか・・・。

 俺は、人呼んで「ビクトリーラーメンマン」。とは言っても別に格闘家ではない。俺は汎銀河コングロマリット「ビクトリー・ラーメン社」の食材調査担当の単なるサラリーマンだ。ビクトリー・ラーメン社は「食」と名のつくものならなんでも扱っている。食品はもちろん、食レポ用のマイクから、食い違い防止会話支援機なんていうのも扱っている。そして、人々は我々社員をビクトリーラーメンマンと呼ぶのだ。

 俺は宇宙中を駆け巡って新たな食材を探すという職務のため数ヶ月の長期出張が多い。出張のきっかけは課長からの指示なのだが、出張から帰ってくるとその課長は異動となっており、新たな課長に出張報告をするということがほとんどだ。
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