クォーター

 祖母の晩年は恵まれていた。呪いで怪物にされて、数千年生きていたが、偶然にも全盲の貴族と恋に落ち、巨大なお屋敷の一室で人目に触れることなく暮らしていたらしい。祖母がメデューサであることはお相手の貴族とその執事のみが知っており、執事は目を見つめないように苦労していた。そして、母を産み落とした瞬間、祖母は灰になって消え、母はお屋敷の召使いたちに育てられたそうだ。

 母は外観こそ普通の人間だったが、見つめた相手の動きを止めてしまうという呪いのほかに、不老という呪いも残っていた。1ヶ所に留まると、歳を取らないことで周りから不審に思われるため、大人になってからは全世界を転々としていたそうだ。そして、日本に来た時、弱視の資産家と恋に落ち、私を生んだ。

 ときどき思うのは、隔世遺伝で髪の毛が蛇にならなくて良かったということだ。頭上で蛇を飼うとなると、蛇たちに生きたカエルとか虫とか、エサをやらないといけないかもしれない。もし、食べこぼしが顔に落ちて来ようものなら気絶してしまうだろう。かといってエサをやらないと、顔に噛み付くかもしれないし・・・。

 私が18歳になり、専門学校に入った時点で、母は私を日本において旅立った。二人一箇所に固まっていない方が良いという判断もあるのだろう。生活費は、祖父の莫大な財産が基金化されており、定期的に振り込まれるため困ることはなかった。
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