究極と呼ばれたコンピューター

 いつもは騒々しい雰囲気の漂う親父の研究室が、今日はいつになく静かだった。夏の一番暑い時期ともなれば当然であろう。だれがわざわざ暑い中を研究室へ出てくるものか。学生であればどこかへ涼みに行くか、エアコンの効いた部屋で昼寝の最中であろう。

 「親父、いるかぁ?」
 騒然と本の壁が続く狭い研究室の通路を進みながら、俺は小声で叫んだ。

 「あー、なんだ、お前か。どうした、講義は終わったのか?」
 親父は眠そうな目をこすりながら、どこからともなく湧き出てきた。
 「あの、ちょっとコンピューターの見学にね。講義の間の休みなんだけどね。使ってみて良いかな?」
 「そうか。俺は眠いからお前勝手に使え。簡単だから。」
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