究極と呼ばれたコンピューター
あまりのおもしろさに期せずして眠ってしまうような講義を、何もこんな天気の良い、遠くから海が呼んでいるような日にやらなくてもいいものを・・・。
「ばかたれ」
俺は古びて塗装の剥げ落ちた窓枠から見える青空に目を移しながらつぶやいた。
「そして、この偏微分方程式の解が高次の振動の虚数平面での係数となり・・・」
工学部一般教務棟のT101番教室の、まばらに座った同じような雰囲気の学生の間を、S教授のつぶやくような声が流れていた。内容がわからない。すでにこの意味不明の状態が昨日の朝一番から続いていた。いや、すなおに講義が始まって以来何一つ理解できないというべきだろうか。そもそも講義についていけるようなら単位など落とすものか。前に座ってうなずいている奴等はきっと理解しているのだろうな。二日間の講義が終わったら、ノートでも借りるとしよう。とにかく出席さえしていれば望みはあるはずだ。
俺は、一応の自己満足を得、けだるい講義の中へ埋没していった。
「・・・というように、多重重力空間における構造解析はなされるわけです。以上で二日間にわたって行いました講義を終了します。後の時間は皆さんに演習問題をやって頂いてそれを試験の代わりにすることにします。」
期せずして講義が終わった。
「皆さん自分の取ったノートを参考にでもして解いてください。では問題を配りますから。あー、それから問題はみんな違いますから隣の人のは参考になりませんよ。」
しかし、演習問題とは・・・。ノートなんか取ってないぞ。俺の脳裏に一瞬白い砂浜とT101教室がオーバーラップし、そして次の瞬間その風景が砕け散り、大理石造りの「留年」という文字が宇宙戦艦ヤマトのごとく地面を割って表れてきた。
「ばかたれ」
俺は古びて塗装の剥げ落ちた窓枠から見える青空に目を移しながらつぶやいた。
「そして、この偏微分方程式の解が高次の振動の虚数平面での係数となり・・・」
工学部一般教務棟のT101番教室の、まばらに座った同じような雰囲気の学生の間を、S教授のつぶやくような声が流れていた。内容がわからない。すでにこの意味不明の状態が昨日の朝一番から続いていた。いや、すなおに講義が始まって以来何一つ理解できないというべきだろうか。そもそも講義についていけるようなら単位など落とすものか。前に座ってうなずいている奴等はきっと理解しているのだろうな。二日間の講義が終わったら、ノートでも借りるとしよう。とにかく出席さえしていれば望みはあるはずだ。
俺は、一応の自己満足を得、けだるい講義の中へ埋没していった。
「・・・というように、多重重力空間における構造解析はなされるわけです。以上で二日間にわたって行いました講義を終了します。後の時間は皆さんに演習問題をやって頂いてそれを試験の代わりにすることにします。」
期せずして講義が終わった。
「皆さん自分の取ったノートを参考にでもして解いてください。では問題を配りますから。あー、それから問題はみんな違いますから隣の人のは参考になりませんよ。」
しかし、演習問題とは・・・。ノートなんか取ってないぞ。俺の脳裏に一瞬白い砂浜とT101教室がオーバーラップし、そして次の瞬間その風景が砕け散り、大理石造りの「留年」という文字が宇宙戦艦ヤマトのごとく地面を割って表れてきた。