究極と呼ばれたコンピューター

パッションNo.9 掲載

   究極と呼ばれたコンピューター

                           -修.

 「くそ熱い・・・」
 夏も半ばを過ぎ、蝉の声のうるさい昼下がり、俺はあってなきがごとき大型クーラーの前の席で一人つぶやいた。薄汚れたT101番教室は、なだらかな傾斜をなした床が、わけのわからない講義を続けているS教授のところまで続いた中くらいの大きさの教室であった。そして俺は、壮絶な騒音をたてている大型クーラーのすぐ前の、一番後ろの5人掛けの席に一人で座っていた。

 「しかし、なんで楽しい夏休みに、くそおもしろくもない講義など受けなくてはならないのだろうか ?」
 俺はその考えに数千回も達していた。そしてその答えにも同じ回数だけ達していた。単位が足りない。この夏期集中講義の単位なくしては留年の憂き目を見ることが必至であった。

 俺としては、同じこの大学で別の学部の教授をやっている親父の面子をつぶさないためにも留年はできなかった。なんと親思いの子たろうか、たてまえは。しかし、留年したら一切の生活費を自分で捻出しろと言われれば、誰でも親思いのよい子になろうというものだ。

 夏季集中講座は、朝一番から日暮れまで約10時間、しかも二日間にわたって、落第生拾いのために行われる。言わば「落穂拾い」のようなものである。有難いことだ。
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