妖精の日

 数日後、試験後の休みの朝、遅く起きた俺は、コンビニで朝飯のサンドイッチと缶コーヒーを仕入れ、試験結果の掲示板を見るために大学に来ていた。

 掲示板には、レポートの結果が「優」と表示されていた。テーマは「街道町と路村形態の関係性について」だったが、これが教授に気に入られたのだろうか。内容が良かったとは考えにくいし・・・。いや、もしかすると、最後に現れた妖精が幸運の女神だったのかも知れない。
 「まぁ、なんでもいいか・・・」
 俺はサンドイッチを食べるため、日陰になっているベンチを探してキャンパス内を歩いた。

 そして再び、あの妖精を見つけた。いや、「見つけた」は正確ではない。妖精は俺が候補にしていたベンチに堂々と座っていたのだ。前に見たのと同じ姿。しかし、サイズが違っていた。原寸大、いや、そもそも妖精の原寸が分からないが、今回は人間の大きさだった。身長は140センチくらいだろう。日常のキャンパスに妖精の姿は違和感の塊だった。俺はベンチの前に立ち止まって、妖精を舐めるように見つめた。身長10センチでは細部は分からないが、人間の大きさだと瞳の色から髪の1本1本まで見分けられる。

 「すみません、座られますか。」
 俺は声を掛けられて我に返った。振り向くと俺と同じコンビニの袋を持った女性が立っていた。
 「あ、いえ・・・」
 俺が口ごもってベンチを見ると妖精は消えていた。
 「ずっとベンチを見られていたので、座られるのかどう分からなくって・・・」
 「日陰に座って朝飯を食おうかと思っていたんですけど・・」
 俺は「妖精がいたので・・」という言葉は飲み込んだ。
 「そうなんですね。私も相席していいですか。なかなか日陰のベンチがなくって・・・」
 俺はうなずいた。彼女は俺とは別の学部の1年生で、俺と同じように試験結果を見に大学に出てきていた。同じ1年生ということで話がはずみ、最後には連絡先を交換することができた。俺のキャンパスライフは明るいものになってきたように感じた。俺がじっと妖精の幻を見つめていたことが出会いのきっかけになったと考えると、幻とはいえ妖精には感謝しなければならないだろう。やはり、妖精は幸運の女神なのだろうか。

 それから数日後、俺は彼女との夕食の後、一人で夜道を帰っていた。ふと空を見上げると、夜空に巨大な妖精が寝そべっていた。全長数百メートルはあるだろうか。サイズと幸運の度合いが比例するのなら、今度は世界平和とか、貧困の根絶とか、もっと大きな幸運をもたしてくれるのかもしれない・・・、俺は少し身勝手だなと思いつつ、巨大な妖精を見つめ続けた。

おしまい
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