【異星人外交官】虚人

 「そうですね。所長、他のセンサーからの情報でもそのようです。光だけでなく、音波や電磁波もすべて吸収しています。まるでブラックホールですね。」
 「そうだな。念のため、黒い丸の周辺の画像を拡大してみてくれ。ブラックホールなら周辺の画像が歪むことも考えられるからな。」
 部下がコンソールを操作し、正面の黒い丸の周辺部の画像を拡大した。そこには黒い丸で切り取られた遠くの山々が映っていた。
 「所長、特に歪みはないようですね。」
 「そうか、まあブラックホールなら発着床が無事なはずはないからな。そうだ、発着床の重量計の数字はどうなっている。」
 発着床は頑丈に作られているとはいえ、宇宙船の重さにより若干たわみが生じる。このたわみをセンサーで計測することで宇宙船の重さが判るようになっていた。
 「重量0ですね。黒いラグビーボールは宙に浮いているんでしょうかね。」
 「うむ、全く掴みどころがないな。我々の前に、本当に何かが居るんだろうか。もしかしたら、不可視の黒い空間が見えているだけなんじゃないのか。」
 「確かにそうですね。何かが居る、という確証が全くないですね。実体があるんでしょうか。もし異星人だとしても、どんなコミュニケーションが取れるんでしょうね・・・」

 外交官たちが頭を抱えていると、映像に変化が起こった。
 「所長、側面のモニターを見てください。小さな黒いのが分離しましたよ。」
 そこには、高さ5mほどの細長い黒い影がラグビーボールから分離してきていた。
 「一般的な異星人なら、宇宙船から異星人のエージェントロボットが出てくるパターンだが、あの黒い影が異星人のエージェントロボットなのだろうか。」

 異星人のコミュニケーション手段は、あるときは強力なレーザービームであったり、爆音であったり、異常な重力波であったりと、生身の人間が受けると一撃で死に至るものがあった。このため、異星人の出迎えは、人間と同じ姿で、色々な種類のセンサーを持ったエージェントロボットに行わせていた。異星人側もそもそも地球上では生存できないケースもあるが、同じ理由で、自分たちの姿に似せて、自分たちと同じようにコミュニケーションができるエージェントロボットを用いていた。
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