ビクトリーラーメンマンシリーズ第1弾 誕生

 ボーイは信じられないほど繊細で、かつ豪華な料理を次々と運び、甲斐は先ほどの疑問などどこかへ吹っ飛んでしまい、ただ無心に食べ続けた。そしてとても宇宙空間での食事とは思えない料理もいよいよ終盤を迎え、最後のデザートとなった。

 ボーイは相変わらず淡々とした調子でデザートを運んできた。
 「デザートは、パレファ星で当店と契約しております農場で集荷しました新鮮なフルーツをふんだんに用いたゼリーでございます。どうぞその深い味わいを御堪能ください。」

 それは半球状の透明なゼリーの中にフルーツのかけらが、円盤上にちりばめられ、銀河系をかたどったものだった。
 甲斐はしばしそのゼリーを眺め、そして若干目を細めた。しかしボーイはそれには気づかなかった。甲斐はゼリーをひとかけらスプーンですくい取り、香りを確かめた後、ゆっくりと味を確かめるように食べた。

 そして一瞬ためらうように天井は仰ぎ、一気に云い放った。
 「失礼ですがボーイさん、このゼリーは南海道の缶入りデザートシリーズ、ナンバー5銀河ゼリー、88年秋製造、第一地域向けだ。ちなみに自信はないが、前菜は山崎海産の冷凍えび、メインは無印良品冷凍コルネ・ドゥ・サーモンじゃないのか。」

 ボーイはしばらく考え込んだ後、頭を抱え、うめき声を漏らした。
 「降参です。おっしゃる通りこれは南海道の缶入り銀河ゼリーです。どうしてわかったのですか。」
 甲斐はやはりそうかといった顔で、ゼリーを食べるのは中断せず、忙しく口を動かしながら答えた。
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