ビクトリーラーメンマンシリーズ第1弾 誕生

 「しかし、レンタルの調査船とは。かなり高速の星間連絡船でも7日ぐらいかかる所を、こんな安物レンタル船で行くことになるとは。上司も何を考えていることやら。」

 甲斐は端っこだけ異様に歯ごたえの良い辛子明太子をかじりながら、ぶつぶつつぶやいた。
 「忍耐を身につけるための訓練かな、やれやれ。しかし、何かもうちょっとまともなものが食いたいな。」

 そして、またご飯をかきこもうとした丁度その時、レンタル船にふさわしい色気の全くない通信装置の呼び出しのベルがリリリと狭い船室中に響いた。
 「お、珍しい。通信だ。誰からだろうか。」

 甲斐はこの出張に旅立ってから最初の通信であった。甲斐はこの通信が上司からのもので、出張を中止して帰って来いという内容のものではないかと淡い期待を抱きながら、受話器を手に取った。画面には見なれない顔の男が映った。

 「もしもし、こちらレンタル調査船のパイロットの甲斐と言いますけど・・。」
 相手は破顔し、やたら明るい声で返事をしてきた。
 「毎度どうも。こちらは元祖移動レストラン、大飯食らい号と申します。お見受けするところ、エリミナ星へいらっしゃる途中のようですが、よろしかったらこちらにドッキングしていただき、一時の豪華な食事はいかがでしょうか。」

 甲斐は食事を中断してしばし考えた。会社からかなりの額の出張旅費が出ているし、そろそろ辛子明太子とご飯の食事にも飽きてきたし、息抜きに行ってみるか。
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