【異星人外交官】マッサージャー

 そして数分が経った時、外交官たちが今までに経験したことのない事態が発生した。
 「え、なんてことだ。所長、船が消えました。」
 部下が突然大声で叫んだ。
 「飛び立ったのか?」
 「いえ、レーダーも、観測衛星も、宇宙港の周りのカメラもそのような兆候は探知していません。」
 「うーん、異星人の技術は想像を絶するからな。異次元にでも行ったか・・・。しかし、一旦着陸したのに、またどっかに行くというのも考え難いな。」
 「確かに判りませんね。あっ、所長、重量センサーの値が0になっていません。発着床が未だに船を支えているようです。」
 発着床は頑丈に作られているとはいえ、宇宙船の重さにより若干たわみが生じる。このたわみをセンサーで計測することで宇宙船の重さが判るようになっていた。
 「見えないだけということか・・・」

 外交官たちが完ぺきともいえる光学迷彩に感心していると、突然変化が訪れた。
 「所長、多数の蝶が舞っています。3D映像のようです。」
 「今度は何が始まったんだ・・・」
 スクリーンにはおびただしい数の蝶が舞っていた。そして、まもなく蝶は消え、ごつごつとした岩場に着陸用の小型宇宙船とおぼしきものと、そこから国旗を持って飛び跳ねるように歩く宇宙服の姿が現れた。
 「こ、これはアポロ11号の着離船じゃないのか・・・」
 「所長、アポロ11号ってなんですか?」
 「君は知らないだろうな。君の産まれるはるか昔に人類が初めて月に到達したときの計画と宇宙船の名前だよ。しかし、こんな映像が見られるとはな・・・」
 所長が感慨深げにスクリーンを眺めていると、また映像が切り替わった。次は毛むくじゃらの人間たちが石斧を持って狩りをしている姿が映し出された・
 「今度はネアンデルタール人のようだな。これは実際の記録映像なのか?」
 「異星人は、はるか昔から地球を観察してきたって言いたいんですかね。」
 「そうだな、表敬訪問の手土産ということだろうか。」
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