机上のブラックホール

 まずい。机にブラックホールができてしまった。ブラックホールって、ものを吸い込むにつれてだんだん大きくなるんじゃなかっただろうか。そう言えば、黒い穴はさっきより大きくなっているように見える。

 俺はどうしたらいいか判らなかったが、とりあえずマンションの管理会社に連絡した。管理会社の社員が10分もしないうちに来たが、様子を見ても唖然とするばかりだった。そして、その社員の提案で警察と消防にも来てもらった。しかし、当たり前だが、このようなケースは誰も経験がなく、安全のため隣のリビングから様子を見るしかなかった。

 2時間程度が経過したとき新たな変化が訪れた。机の下が急に白く光り出したのだ。机の下から空気が噴出し始めたのか、床のほこりが舞い上がり、ティシュペーパーが1枚吐き出されてきた。続いて、割りばしが飛び出て、床に刺さった。

 これは先ほど俺がブラックホールに投げ込んだものだ。もしかすると天板の下にホワイトホールが出現したのではないか。俺以外のみんなは何が起こっているのか想像ができないようで、あっけにとられたままである。

 そして間もなく、机下からの空気の吹き出し量が増えたのか、机が宙に浮いて天井に向かって上昇した。そして天井に触れた瞬間、机の形に沿って天井が吸い込まれて大きな穴が開き、机は書斎から出ていった。俺たちは、天井に空いた穴越しに、机が空高く上昇していくのを見守るしかなかった。

 あの机はどこまで上昇して行くのだろうか。吸い込んで溜めた空気を噴出しているとしたら、上空のどこかで空気が尽きて落ちてくるのだろうか。落ちてくると、また空気があるので吸い込んで上昇するならば、これを無限に繰り返すことになるのか。

 そもそもなぜ机にブラックホールが現れたのか判らないし、この後どうなるのかも判らなかったが、結果的に天井に穴が開いてしまったので、俺は再び引っ越さなければならないということだけが理解できる事実だった。

おしまい
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