机上のブラックホール

机上のブラックホール
                          -修.

 「ん?」
 机の天板の異常に気が付いたのは、帰宅後、コンビニ弁当で一杯やって、ネットサーフィンでもするかと書斎の机に座ったときだった。

 書斎といっても大そうなものではない。最近引っ越してきたマンションのリビングの隣の、2畳ほどの細長い独立した部屋だ。この部屋は、流行りのリモートワークでもうるさくないよう、スライドドアで壁も少し厚く、遮音性も考えてあるらしい。

 そして机は幅120cmほどの木目調の化粧板に、黒い鉄パイプの足がついた極めて単純なものだ。俺には天板の右上のあたりの木目が小さく渦巻いているように見えた気がしたのだ。10円玉ほどの大きさだろうか、他の部分はいたって普通の木目だが、ここだけ木目が渦状になっている。俺は数日前に転勤して来たばかりで、慣れない職場で疲れているのだろうか。

 俺は渦巻に少し近づいて目を凝らした。すると、どうも渦が動いているように見える。
 「んん、動いてる?」
 自分の目のほうが回っているという可能性も考え、目をこすって見直してみてもやはり渦は回っていた。そして、見ている間に木目の間隔がだんだん小さくなり、とうとう真っ黒な丸となった。光を全く反射しない塗料というのがあるが、まるでそんな塗料を丸く塗ったような感じだ。

 俺は本能的にこれはまずいと感じた。何かは分からないが、まずいことが起こっているのに違いない。俺は机のノートパソコンや書斎に置いていた段ボール箱を急いでリビングに退避した。

 そして書斎に戻ると、何かガスが出ているようなシューっという音が聞こえてきた。俺はとっさに黒い丸のところを見たが、見た目ではわからなかったため、リビングからティッシュペーパーを1枚持ってきて、黒い丸のところに近づけてみた。すると、あっという間にティッシュペーパーが吸い込まれた。この音は黒い丸、いや黒い穴が空気を吸い込んでいる音のようだ。俺はとっさに天板の下側を覗き込んだが、特に変わったことはなく、ただの板だった。

 天板の表面から吸い込んだ空気とティッシュペーパーはどこに行っているのだろうか。吸い込んだら終わりなのか。これは厚さ0のブラックホールということなのだろうか。俺は試しに、先ほど食べたコンビニ弁当の割りばしを黒い穴に向かって投げてみた。するとやはり一瞬で吸い込まれて消えた。
1/2ページ
スキ