N博士のタイムマシン

 いくらN博士が天才とは言え、目覚まし時計がタイムマシンに改造できるのだろうかとエージェントは耳を疑った。
 「左様、タイムマシンだ。もう一つ理由がある。今まで、わしは数々の失敗をしてきた。ま、発明には失敗が付きものだが、君にも投資家にも大変迷惑を掛けたので、過去に戻って自分にアドバイスできればと思ったのだ。」
 「凄い研究テーマですね。」
 「そうだろ。しかしな、研究の結果、残念ながら過去には戻れないという結論に達した。」
 「どういうことですか。」
 「うむ、君はタイムパラドックスというのを知っているかね?」
 「はい、過去に戻って自分の親を殺すとどうなるかってやつですよね。」
 「左様。まあ、話を単純にするために1時間戻って自分を殺そうとすると仮定しよう。ここでパラドックスにならないためには2つの考え方がある。1つは時間軸不変の原理、もう1つは並行時間軸の原理だ。」
 「なんか難しそうですね。」

 「いやいや、簡単なことだ。まず、時間軸不変の原理でいえば、1時間戻っていくら自分を殺そうとしても、どうしても殺すことができないということだ。今、自分が生きているのだから、たとえ1時間戻れたとしても殺すことができなかったという事実は確定しているということだな。これをわしの失敗回避に当てはめると、タイムマシンで過去に戻れたとしても、失敗という事実が確定している以上、それは回避できないということになる。」
 「なるほど、過去は変えられないということですね。」
2/4ページ
スキ