量子力学的むむ

 岩塊に接岸したのち、加圧ブリッジで2隻をつなぎ、SOS信号を出していた船に移動すると、そこでは初老の男が出迎えた。
 「何か忘れものか・・・。」
 老人の言葉は2人が全く予想していないものだった。
 「えっ、我々はミレニアムイーグル号の乗組員で、たった今ドッキングして乗り込んだばかりだが・・・。いったい何があったんだ。」
 「先ほど話した通り、船のジェネレーターが故障して、この岩塊に接岸して救助を待っていたのだ。先ほど、君たちがスペアのジェネレーターを譲ってくれたので、今から修理しようとしていたところだ。」
 老人の指さす方向にはジェネレーターの梱包が置いてあった。2人は顔を見合わせた。どうも話が見えない。
 「いや、SOS信号がまだ続いていたから救助に来たんだが・・・。」
 「おかしいな。先ほど君たちが来た時点でSOS信号は切ったはずだが。」

 クリストファー船長は混乱していたが、念のためトムにミレニアムイーグル号のスペアのジェネレーターを確認するように命じた。トムは走って船に戻っていった。
 「船長、スペアは無くなっていますね。」
 「むむ、どういうことだ・・。」
 2人が頭を抱えていると、老人が思い出したように話し出した。
 「バミューダ三角錐の中ではどうも時間と空間が捩じれているのではないかと聞いたことがある。この宙域はバミューダ三角錐の周辺だろう。だから、何か影響を受けているんじゃないだろうか。先ほども話したのだが、この船が故障してから1週間も経っていないのだが、この船は20年ほど前の型式だと聞いて驚いていたのだ。新造船の処女航海だったので最新型のはずなのに。何かの間違いではないかと・・・」

 何か分からないことばかりだったが、SOS信号は止まり、スペアのジェネレーターも渡したので、これ以上居ても意味がないということでミレニアムイーグル号は先を急ぐことにした。
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