グリーンエイリアンの誤算

グリーンエイリアンの誤算
                          -修.

 うららかな陽光の下、富士山中腹に、直径1000m、厚さ50mの巨大UFOが突然現れた。巨大UFOから交渉場所に指定された、自衛隊の東富士演習場に現れたのは全身が緑の葉っぱに覆われた3m近い背丈の異星人だった。

 いや、巨大なギリースーツ(カモフラージュ服)のような外観のため、足があるのか、腕があるのか、何本なのか、顔があるのかどうかさえも分からず、本当に異星人なのか、ロボットなのかも分からなかったが、見た目から「グリーンエイリアン」と呼ばれるようになった。

 彼らは演習場で圧倒的な火力を見せつけ、彼らは土地の提供を要求した。彼らは植物系の生物のため、水と二酸化炭素と太陽があれば光合成で生活でき、1カ月ほどで2倍の個体数に増えることできるそうだ。彼らにとって、水が空から無尽蔵に降り注ぐ、緑一色の日本は喉から手が出る、夢のような環境だったようだ。

 政府は圧倒的な戦力に対抗しようもなかったが、せめて樹海の範囲に限ってもらう約束だけは得ることができた。もちろん、そんな約束が永遠に守られるという保証は全くなかったが・・・。巨大UFOは樹海に着陸し、遠くからは、彼らの自動重機が樹海を切り開いている様子と、切り開かれた土地を歩く多数のグリーンエイリアンが確認された。

 そして1カ月が経過したころ彼らから連絡があった。それは地球から撤収するというものだった。突然の連絡に政府は沸き立ったが、一応、理由の説明を求めた。その理由は、彼らが植物系であるがゆえに、異常な量の杉やヒノキの花粉が彼ら自身のめしべに先に受粉してしまい、正常受粉ができず、増殖ができないことが分かったためとのことだった。

 グリーンエイリアンにとっての花粉症は種族の存続に関わる重大問題であった。期せずして人類は平和を取り戻した。

おしまい
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