N博士のVTOL
「ではいくぞ、発進。今日は1000mまで上昇したのち、下降する。」
N博士はセンターコンソールのダイヤルをゆっくりと回し始めた。
「ディスプレイの左上の数値が対地速度、右上が高度、その下がエネルギー供給量じゃ。その横は機体のバランス状態じゃな。一応、空を飛ぶので付けておいた。」
「N博士、エンジンが掛かっていないようですけど・・・。」
「空を飛ぶのにエンジンは必要なかろう。」
エージェントは4点式シートベルトに保持されたまま小さくずっこけた。
エージェントの心配をよそに、VTOLは音もなく徐々に浮上していった。車内は無重力になるようでエージェントは体が浮くのを感じた。対地速度も高度もだんだん上がっていく。
「N博士、安定していますね。すごい。しかもほとんど音がしない。」
「まあな。音がする部分がないからな。」
エージェントには風切り音だけが聞こえていた。
エージェントがふとディスプレイに目をやると、車体が斜めになっていることが表示されていた。
「N博士、車体が傾いていませんか。」
「あー、車内は無重力なので傾いてもひっくり返っても問題ないじゃろ。なので、それを戻す装置も付けておらん。それと、言い忘れたが水平方向の移動装置も付けておらんので、このVTOLは上下にしか動けん。」
「そんなので大丈夫なんですか。風任せってことですよね。」
「君は熱気球大会を見たことがないかな。風を読めば、推進力はなくてもどちらにでも自在に動けるのじゃよ。」
エージェントは、N博士が風を読めるとは到底思えなかったが突っ込むのは思いとどまった。
その数分後に高度が1000mに達した。
「目的の高度に達したようじゃな。そろそろ下降に移ろうか。」
「N博士、大成功ですね。あっけないくらいです。おめでとうございます。」
そのとき、エージェントはディスプレイに赤いアラートが点滅しているのに気がついた。
「N博士、何かアラートが点滅していますけど・・・。」
「むむむ、電池切れか。少し前から電池を入れっぱなしだったので早くなくなったのかもしれないな。コンビニブランドの電池じゃなく、少し高くてもメーカーブランドの電池にしておけばよかったかもしれないな。君、グローブボックスに予備の電池が入っているから交換してくれないか。」
「わかりました。交換します。」
エージェントがグローブボックスを開けると、そこにはコンビニのロゴが入った単3電池が宙に浮かんでいた。電池ボックスにも同じロゴの電池が入っている。エージェントは電池ボックスから電池を全部外し、手に持った。
丁度その時、突風が吹いて車体が大きく揺れた。
「あっ・・・。」
エージェントは思わず手を開いてしまい、電池はグローブボックスへと飛んで行った。
「まずい。N博士、すみません。古い電池と新しい電池が混ざってしまいました。」
「えっ、なんだって。」
「何か電圧を計る機械はないですか。」
「そんなものは積んでない。何でもいいから早く電池をセットしてくれ。あと何秒かでエネルギー切れになって墜落するぞ。」
「わかりました。」
エージェントは新しいのか古いのかわからなかったが、電池4本を急いで電池ボックスにセットした。
「うーん、どうやらそれぞれ1本は古い奴が刺さっているようだな。」
N博士はディスプレイの表示を見ながらつぶやいた。
「また、電池を入れ替えてみましょうか。」
「いや、すでにギリギリのエネルギー状態なので、今度電池を外すと数秒で地上に墜落するだろう。」
「すみません。俺のせいで・・・。」
エージェントは、徐々に増えていく対地速度と、逆にどんどん少なくなる高度を見ながらつぶやいた。
N博士はセンターコンソールのダイヤルをゆっくりと回し始めた。
「ディスプレイの左上の数値が対地速度、右上が高度、その下がエネルギー供給量じゃ。その横は機体のバランス状態じゃな。一応、空を飛ぶので付けておいた。」
「N博士、エンジンが掛かっていないようですけど・・・。」
「空を飛ぶのにエンジンは必要なかろう。」
エージェントは4点式シートベルトに保持されたまま小さくずっこけた。
エージェントの心配をよそに、VTOLは音もなく徐々に浮上していった。車内は無重力になるようでエージェントは体が浮くのを感じた。対地速度も高度もだんだん上がっていく。
「N博士、安定していますね。すごい。しかもほとんど音がしない。」
「まあな。音がする部分がないからな。」
エージェントには風切り音だけが聞こえていた。
エージェントがふとディスプレイに目をやると、車体が斜めになっていることが表示されていた。
「N博士、車体が傾いていませんか。」
「あー、車内は無重力なので傾いてもひっくり返っても問題ないじゃろ。なので、それを戻す装置も付けておらん。それと、言い忘れたが水平方向の移動装置も付けておらんので、このVTOLは上下にしか動けん。」
「そんなので大丈夫なんですか。風任せってことですよね。」
「君は熱気球大会を見たことがないかな。風を読めば、推進力はなくてもどちらにでも自在に動けるのじゃよ。」
エージェントは、N博士が風を読めるとは到底思えなかったが突っ込むのは思いとどまった。
その数分後に高度が1000mに達した。
「目的の高度に達したようじゃな。そろそろ下降に移ろうか。」
「N博士、大成功ですね。あっけないくらいです。おめでとうございます。」
そのとき、エージェントはディスプレイに赤いアラートが点滅しているのに気がついた。
「N博士、何かアラートが点滅していますけど・・・。」
「むむむ、電池切れか。少し前から電池を入れっぱなしだったので早くなくなったのかもしれないな。コンビニブランドの電池じゃなく、少し高くてもメーカーブランドの電池にしておけばよかったかもしれないな。君、グローブボックスに予備の電池が入っているから交換してくれないか。」
「わかりました。交換します。」
エージェントがグローブボックスを開けると、そこにはコンビニのロゴが入った単3電池が宙に浮かんでいた。電池ボックスにも同じロゴの電池が入っている。エージェントは電池ボックスから電池を全部外し、手に持った。
丁度その時、突風が吹いて車体が大きく揺れた。
「あっ・・・。」
エージェントは思わず手を開いてしまい、電池はグローブボックスへと飛んで行った。
「まずい。N博士、すみません。古い電池と新しい電池が混ざってしまいました。」
「えっ、なんだって。」
「何か電圧を計る機械はないですか。」
「そんなものは積んでない。何でもいいから早く電池をセットしてくれ。あと何秒かでエネルギー切れになって墜落するぞ。」
「わかりました。」
エージェントは新しいのか古いのかわからなかったが、電池4本を急いで電池ボックスにセットした。
「うーん、どうやらそれぞれ1本は古い奴が刺さっているようだな。」
N博士はディスプレイの表示を見ながらつぶやいた。
「また、電池を入れ替えてみましょうか。」
「いや、すでにギリギリのエネルギー状態なので、今度電池を外すと数秒で地上に墜落するだろう。」
「すみません。俺のせいで・・・。」
エージェントは、徐々に増えていく対地速度と、逆にどんどん少なくなる高度を見ながらつぶやいた。