第1章 美少女着ぐるみ
着替えが終わり、マスクの狭い視界にも、息苦しさにも慣れてきたとき、ドアがノックされた。
「はい、どうぞ。」
川島が明るく答えると、ドアが開き、恰幅が良い、背広の男性が入ってきた。
「あっ!」
留美は思わず小さく声を上げた、ドアには先ほど見た幻想の金縁メガネの男性が立っていた。男性は留美の声には気づかず、川島に話しかけた。
「いやー、川島さん、今年も頼むねー。毎年、好評なんだよ、この発表会。バイヤーからも着ぐるみがかわいいって評判だしね。まあ、商品じゃなくて、そっちかー!って、突っ込むところだけど。うーん、今年もかわいいね。なんか前の人が事故にあったんだって。大丈夫だった。」
「はい、命に別状はないんですけど今は入院中です。足首を骨折してて、当分はびっこひくらしいんで、この仕事は難しいかなー、って言ってました。」
「そう、大変だねー。今までお世話になったから、お大事にって言っといて。でも、今年も大丈夫そうだね。後釜、よく探せたねー。」
「はい、たまたま、希望者がいて。」
会話の流れからは、それほど悪い人ではなさそうだった。多分、偉い人だろうから、ここで自分を売り込んでおかないと、と留美は思い、割り込んだ。
「私、木隅留美と言います。今日からこちらに配属されました。今後ともよろしくお願いします。」
マスクの中で普通にしゃべったため、音が反響してうるさい。
男性は留美の前に近寄ってきた。来るか、留美は身構えたが、肩や腕、ましてやお尻を触られることなく、視界の外で手が握られているのが感じられた。男性は握手をしたかったらしい。
「こちらこそよろしくね。毎年お世話になっているからね。顔も見たかったけど、また、マスクを外した時にちゃんとあいさつするからね。それじゃ、ステージで。」
男性は、握手をしたら、さっさと出ていった。デジャブなのか。いや、マスクを被ったときに確かに幻想を見た。デジャブではない。そして、さっき見た幻想とは違って、お尻を触られることもなく、握手だけで去っていった。なぜ、違うのか・・・。一体なんだったのだろう。疑問は残ったが、留美にはそれを考え続ける余裕がなかった。
「はい、どうぞ。」
川島が明るく答えると、ドアが開き、恰幅が良い、背広の男性が入ってきた。
「あっ!」
留美は思わず小さく声を上げた、ドアには先ほど見た幻想の金縁メガネの男性が立っていた。男性は留美の声には気づかず、川島に話しかけた。
「いやー、川島さん、今年も頼むねー。毎年、好評なんだよ、この発表会。バイヤーからも着ぐるみがかわいいって評判だしね。まあ、商品じゃなくて、そっちかー!って、突っ込むところだけど。うーん、今年もかわいいね。なんか前の人が事故にあったんだって。大丈夫だった。」
「はい、命に別状はないんですけど今は入院中です。足首を骨折してて、当分はびっこひくらしいんで、この仕事は難しいかなー、って言ってました。」
「そう、大変だねー。今までお世話になったから、お大事にって言っといて。でも、今年も大丈夫そうだね。後釜、よく探せたねー。」
「はい、たまたま、希望者がいて。」
会話の流れからは、それほど悪い人ではなさそうだった。多分、偉い人だろうから、ここで自分を売り込んでおかないと、と留美は思い、割り込んだ。
「私、木隅留美と言います。今日からこちらに配属されました。今後ともよろしくお願いします。」
マスクの中で普通にしゃべったため、音が反響してうるさい。
男性は留美の前に近寄ってきた。来るか、留美は身構えたが、肩や腕、ましてやお尻を触られることなく、視界の外で手が握られているのが感じられた。男性は握手をしたかったらしい。
「こちらこそよろしくね。毎年お世話になっているからね。顔も見たかったけど、また、マスクを外した時にちゃんとあいさつするからね。それじゃ、ステージで。」
男性は、握手をしたら、さっさと出ていった。デジャブなのか。いや、マスクを被ったときに確かに幻想を見た。デジャブではない。そして、さっき見た幻想とは違って、お尻を触られることもなく、握手だけで去っていった。なぜ、違うのか・・・。一体なんだったのだろう。疑問は残ったが、留美にはそれを考え続ける余裕がなかった。