第1章 美少女着ぐるみ
留美が何度繰り返したかわからない思いをまた繰り返していたところ、窓を背にして座った課長が声を掛けてきた。
「ルミちゃん、ちょっといいかなー」
「なんですかー」
もう、忙しいのにー、という言葉は飲み込んで留美は席を立った。そもそも、みんな「ちゃん」づけはいかがなものか、「木隅(きすみ)さん」だろ。まあ、入社当初は「キスミー、ルミ!」が酒の席での定番になっていたので、だいぶましにはなったが・・・。さすがこの会社。いい加減。まあまあ慣れたとはいうものの、いつまでもこの違和感にはついていけなかった。
「ルミちゃん、プランニングに行きたいって希望してたろー。来週からGBプランニングっていう本社の部署に転勤になったから。良かったねー、希望がかなって。事務所は本社だけど、初日にはどっかのホテルでプレゼンがあるから直行してって。」と、みんなにも聞こえるように大きめの声で話して、課長は留美に転勤先が書かれたメモを渡した。
「送別会は月末の締めが終わってからやるから、そのときはまた来てね。みんなもいいね。それと、今日中に引継ぎよろしくねー。それと辞令は後で送るから・・」
事務所からはパチパチパチとまばらな拍手が沸いたが、月末で手が離せないのと、このような転勤はしょっちゅうなので、みんなの興味はその程度だった。本社は隣町にあり、転勤というほど大袈裟なものでもない。しかし、辞令を後で送るからーって、いったいどういう神経をしているのだろうか。そもそも、誰に引き継げばいいんだ。まあ、そういうことはいい。とりあえず、この昭和の職場から脱出はできるようだ。
「わかりましたー。今までありがとうございましたー。」
課長のしゃべりがあまりにあっさりしていたせいか、同じのりで返事をしてしまったが、留美は、あこがれの本社の、しかも企画部門への転籍という願いがかなったことが徐々に実感できてきて、席に戻るときは小さくガッツポーズをしてしまっていた。
あっけなく希望が叶ってしまった。希望も出してみるものだ。これで、このぬるま湯のような事務所から逃れて、来週からは天空のオフィスなのだ。留美は、にやにやしているのが周りにさとられないよう、うつむいて定時までの事務所での最後の時間を過ごした。もちろん、引継ぎなどやっていない・・・・。後は野となれ山となれだ。
「ルミちゃん、ちょっといいかなー」
「なんですかー」
もう、忙しいのにー、という言葉は飲み込んで留美は席を立った。そもそも、みんな「ちゃん」づけはいかがなものか、「木隅(きすみ)さん」だろ。まあ、入社当初は「キスミー、ルミ!」が酒の席での定番になっていたので、だいぶましにはなったが・・・。さすがこの会社。いい加減。まあまあ慣れたとはいうものの、いつまでもこの違和感にはついていけなかった。
「ルミちゃん、プランニングに行きたいって希望してたろー。来週からGBプランニングっていう本社の部署に転勤になったから。良かったねー、希望がかなって。事務所は本社だけど、初日にはどっかのホテルでプレゼンがあるから直行してって。」と、みんなにも聞こえるように大きめの声で話して、課長は留美に転勤先が書かれたメモを渡した。
「送別会は月末の締めが終わってからやるから、そのときはまた来てね。みんなもいいね。それと、今日中に引継ぎよろしくねー。それと辞令は後で送るから・・」
事務所からはパチパチパチとまばらな拍手が沸いたが、月末で手が離せないのと、このような転勤はしょっちゅうなので、みんなの興味はその程度だった。本社は隣町にあり、転勤というほど大袈裟なものでもない。しかし、辞令を後で送るからーって、いったいどういう神経をしているのだろうか。そもそも、誰に引き継げばいいんだ。まあ、そういうことはいい。とりあえず、この昭和の職場から脱出はできるようだ。
「わかりましたー。今までありがとうございましたー。」
課長のしゃべりがあまりにあっさりしていたせいか、同じのりで返事をしてしまったが、留美は、あこがれの本社の、しかも企画部門への転籍という願いがかなったことが徐々に実感できてきて、席に戻るときは小さくガッツポーズをしてしまっていた。
あっけなく希望が叶ってしまった。希望も出してみるものだ。これで、このぬるま湯のような事務所から逃れて、来週からは天空のオフィスなのだ。留美は、にやにやしているのが周りにさとられないよう、うつむいて定時までの事務所での最後の時間を過ごした。もちろん、引継ぎなどやっていない・・・・。後は野となれ山となれだ。