第7章 着ぐるみパラダイスへ

 かおりも同じように感じたようで、黒岩から勧められたソファーに座りつつ話し始めた。
 「おもてに止めてった外車はお二人のですか。」
 「自分のです。中古ですけどね。いわゆる税金対策ってやつですよ。」

 と、医者の田中。留美は、どうも自分は場違いの場所に来てしまったのではないかと感じ始めていた。黒岩とは話すネタに事欠かないが、医者や税理士や、違う世界に住んでいそうな女友達とどんな会話が成立するだろうか。かおりは留美の心配など一切気にしていない様子で話を続けていた。いつも外国人とビジネスを行っているだけはある。こういうときには心強い。

 「すごーい、やはり儲かるんでしょうね。お二人とも・・・。」
 「いやいや、それほどでも。黒岩のほうが役者やっているんで儲かっていますよ。だんだん主役級が回ってきていますしね。俺たちは地道に働いているだけです。」

 男性二人はごまかしていたが、相当リッチな感じであり、ますます黒岩とのギャップを留美は感じ始めていた。それとも映画俳優ってそんなに儲かるものなのだろうか。
 「三人はどこで知り合ったんですか。」
 かおり、ナイスパス、留美は心の中でかおりの質問に拍手を送った。

 「最初はどこだったなー。どこかのスナックだったかなー。僕たち二人も特撮好きなんで、黒岩とは話が合って・・・。特に遅い時間から飲みだすことが多いので、結構一緒になることが多かったんだよね。」
 と、医者の田中。留美はそういうものかと妙に納得した。ならば、ガールズバーにいそうな二人の女性が居るのもなんとなくうなずける。

 「ほらほら、折角なんで、撮影会のほう始めようよ。かおりさんも待っているし・・・。でも、最初は最近手に入れたマスコットから行こうか、これ少し小さめなんで留美さんにお願いしようかな。かおりさんはもう少し待ってね。次は、巨大ヒーロー系で行くから。」

 確かに留美以外の三人はそろって背が高かかったようだ。
 「マスコットはスカートのままでも着れないことはないから、すぐ着られるよ。かおりさん、背中のチャック閉めたりとか、手伝ってもらってもいいかな。ま、服を脱ぐわけではないから僕でもいいけど、女性のほうがいいよね。」
 と黒岩はパーテーションのほうを指さした。

 「じゃ、お先に着ますね。」
 留美はかおりといっしょにパーテーションの裏へ移動した。
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