第6章 真理

 留美は幻想のことは伏せたが、今まで見てきた幻想が、真理をキーにすべてつながったと感じた。最初のセクハラおやじ、戦隊スーツ姿の会話、鳥の着ぐるみを脱いだ時の会話、すべてが真理の経験ということだ。留美自身の黒岩に対する思いが幻想を見せているわけではなかった。むしろ、真理の強い思いや強く感じたことが一連の幻想となったのではないか。であれば、真理の黒岩への思いはどうなのだろうか。もしかすると留美以上に真理は黒岩を好きなのではないか。だとすると、留美がこれ以上深い入りする余地はない。

 「話は変わりますけど、黒岩さんとは仲良くされていましたか・・・」
 「あー、あのイケメンの黒岩さんね。なんか唐突ね。よく現場で一緒になったわね。何回か、お茶とか、軽く食事には行ったことあるけど、その程度よ。あなた、黒岩さんが気になっているの。かっこいいもんね。まあ、それほど深くは知らないけど、いい人じゃないかと思うわ。頑張ってね。」

 意外にも真理の思いはそれほどでもなかったようだ。真理の話は、黒岩から聞いた話とも一致していた。もし黒岩と付き合うことになっても真理に遠慮する必要はなそうだ。しかし・・・。留美は、自分が見た幻想と真理の関係が分からなくなり、その後の話は上の空で相づちを打って聞いていた。
2/2ページ
スキ