第5章 黒岩

 「留美さん、お疲れ様」
 着替えを済ませ、かおりと控室を出ると、黒岩はスタジオの端で他のスタッフと話しながら待ってくれていたようだ。相変らず、かおりの反応が早い。

 「黒岩さん、お疲れ様です。監督とのお話は終わりました?」
 「あー、思ったほど長くは掛かりませんでした。かおりさん、でしたね。行きつけの喫茶店が近くにあるんでお茶でもどうですか。」
 「いいですね。よく行かれるんですか。」
 「そうですね。打ち合わせの時とか、食事とか。ここは街はずれなんで、お茶ができたり、ご飯が食べられるところが他にはないので、結構使ってますね。」
 黒岩はかおりと並んで出口に向かっていった。留美は、かおりが前のめりの態度に少しいらつきながらも、その後をついて行った。
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