第1章 美少女着ぐるみ
遡ること、先週の金曜日、留美は雑居ビルの1階の雑然とした事務所にいた。あちこちから電話の呼び出し、会話が聞こえ、どの机の上にも書類が雑然と積み上げられ、パソコンがファイルと書類に埋もれている。これでタバコの煙でもあれば、典型的な昭和の事務所の風景だ。
留美は受話器を肩と頭ではさみ、片手で伝票を押さえたまま、反対の手で書類の山に半ば覆われたキーボードを叩いていた。
「だからー、注文したのは2000個なんですけど、1000個しか来てないんですよ。話、聞いてますかー。」
髪はセットした後はあるが、イライラすると髪をかきあげる癖のせいでかなりボサボサになっている。何より、グレーのズボンに、グレーのジャンパーの制服というなんとも地味な格好で、留美は電話口で格闘していた。
「今月、発送ミス2回目ですよねー。エアーで飛ばしてもらえます。エアーですよ、エアー。空気じゃなくて・・・。そうそう、飛行機。いいですか。じゃ、よろしく!」
留美は半ば叩きつけるように受話器を置いた。
「ルミちゃん、どうしたー?また、中国の部品メーカー?」
向かいの席に座った先輩の岡野は留美に尋ねた。会社に入って5年目の留美と年齢は大差ないが、無精ひげで小太りのため10歳ぐらいは上に見える。留美と同じ上下グレーの作業服のせいか、一層若々しさが削がれている。相変わらずちょっとなれなれしいな、と思いつつも、誰かに愚痴らないと留美は気が済まなかった。
「そうなんですよ。もう腹が立つ。だいたい日本語もかたことで、おまけに、やるやる詐欺なんで、始末が悪いんですよ。今月2回目ですよ。来週、ちゃんと部品来ますかねー」
「まあ、大丈夫なんじゃない。今度だめだったら、課長が切るって先方に言ってたから。」
留美には気休めにしか聞こえなかったが、まあ、ダメな場合はダメだ。
留美は受話器を肩と頭ではさみ、片手で伝票を押さえたまま、反対の手で書類の山に半ば覆われたキーボードを叩いていた。
「だからー、注文したのは2000個なんですけど、1000個しか来てないんですよ。話、聞いてますかー。」
髪はセットした後はあるが、イライラすると髪をかきあげる癖のせいでかなりボサボサになっている。何より、グレーのズボンに、グレーのジャンパーの制服というなんとも地味な格好で、留美は電話口で格闘していた。
「今月、発送ミス2回目ですよねー。エアーで飛ばしてもらえます。エアーですよ、エアー。空気じゃなくて・・・。そうそう、飛行機。いいですか。じゃ、よろしく!」
留美は半ば叩きつけるように受話器を置いた。
「ルミちゃん、どうしたー?また、中国の部品メーカー?」
向かいの席に座った先輩の岡野は留美に尋ねた。会社に入って5年目の留美と年齢は大差ないが、無精ひげで小太りのため10歳ぐらいは上に見える。留美と同じ上下グレーの作業服のせいか、一層若々しさが削がれている。相変わらずちょっとなれなれしいな、と思いつつも、誰かに愚痴らないと留美は気が済まなかった。
「そうなんですよ。もう腹が立つ。だいたい日本語もかたことで、おまけに、やるやる詐欺なんで、始末が悪いんですよ。今月2回目ですよ。来週、ちゃんと部品来ますかねー」
「まあ、大丈夫なんじゃない。今度だめだったら、課長が切るって先方に言ってたから。」
留美には気休めにしか聞こえなかったが、まあ、ダメな場合はダメだ。