第3章 かおり

 「口、口・・・・」
 留美はかおりにチキンのことを思い出させた。
 「あ、あ、そうね・・・。いろんな可能性があるわね。で、マスクを被ったときだけ見えるのね。」
 かおりは一応もぐもぐしながら問いかけた。たぶん、味は分かっていない・・・。

 「それが、いつもってわけじゃないのよ。戦隊モノの練習用のマスクでは見えたことないし、同じマスクでも最初の1回だけなのよね。不思議でしょ。」
 「ふーん、ますます謎ね。急に暗くなったからか・・・、マスクを被るときの頭の角度に関係があるのか・・・。登場人物、謎の女性、黒縁メガネのポマードギトギト社長、イケメンの黒岩・・・」

 今度はパンを口にくわえたまま、かおりはつぶやいた。
 「シチュエーションからするとデジャブかなー。暗くなった瞬間、気が遠のいて何かをみたような気がする。実は何も見ていなくて、後になって何かの拍子に、以前に映像を見たと勘違いする。新しい環境で疲れてるんじゃないの。そうそう超常現象は起きないからね。普通。」

 ものすごく現実的な結論だった。趣味はすごいが、やはり常識人だ。かおりは、いったん出した結論に満足したようで、今度はすごい勢いでランチを食べ始めた。
 「最近、職場変わったからね。職場で結構緊張しているとか・・・」

ごもっともではあるが、以前の職場よりかなり環境はいいと感じているのだが・・・
 「そうかなー。なんか、はっきり見た感じがするのよねー。」
 「黒岩さんが何かキーかもしれないわね。留美、少し気になってるでしょ・・・」

 留美は、かおりの言う通りかも知れないとも思いながら、ランチに戻っていった。
 「あー、今度わたしの部屋で実験してみる。うちにもいろいろマスクあるし、パーティー用のゴムのマスクとか買っとくから・・・」
 かおりは思い出したかのように切り出した。
 「うん、でも。また同じようなことがあったら相談するね。」
 留美は、かおりがいったいどんなマスクを持っているのか気になったが、相当偏りのある趣味のかおりである。どこかの種族が儀式で使ったマスクとか、なんとなく呪われそうなマスクがありそうだったので、軽く断った。
 「そう。結構レアものがあるんだけどなー。」
 留美は「それが怖いんだって・・」という言葉は飲み込んでほほえんだ。

 かおりは思い出したように、付け足した。
 「今度、特撮、特に巨大ヒーローとか怪獣が出てくるやつの撮影の時は声かけて、会社休んで見学に行くから・・・」
 かおりの新たな趣味が見つかった。
2/2ページ
スキ