ビクトリーラーメンマンシリーズ第6弾 出世茸

 調査船を着陸ポイントに降下させると、そこには縦横500mはあろうかという巨大な施設があった。
 「こんなジャングルに宙港があるなんて。なんのために・・・。」
 俺は無線で着陸許可を申請した。
 「こちらはビクトリーラーメン社調査船 識別番号VR3195BEZ。パイロットは甲斐。着陸許可を要請する。」
 「了解した。1番ゲートへの着陸を許可する。操作はこちらから遠隔で行うので、制御を渡して欲しい。」
 俺は言われた通りに調査船の制御を宙港に渡した。すると間もなく、施設の屋根の一部が観音開きに開き、この調査船の数倍の船でも入れそうなドックが現れた。
 「なんか仰々しい宙港だな。」
 俺は格納庫のような場所への着陸は経験がなく、かなりの違和感を感じた。すると宙港からは耳を疑うような連絡があった。
 「着陸後に船体の消毒、洗浄、乾燥工程を2回行うので、許可するまで船内に留まるように。」
 消毒、洗浄、乾燥工程だと。調査船をばい菌か何かと思っているのだろうか。

 2回の消毒、洗浄、乾燥工程は半日近く掛かった。長すぎる。俺が調査船のエアロックを出ると、ドックの出入り口では白衣を着た初老の男性が明るく出迎えてくれた。
 「ビクトリーラーメンの甲斐さん、ようこそわが家へ、待たせたね。」
 「わが家なんですか・・・。」
 俺はいきなりの言葉に理解に苦しんだが、そこはスルーして任務を進めることにした。
 「うちの課長の知り合いのキノコ採りの名人の方を訪ねてきたんですけど・・。」
 「それはわしのことだな。」
 「えっ、てっきりどこか近くの小屋に住んでいる孤独なおじさんみたいなイメージでいたんですけど。」
 「あー、あいつは説明が下手だからな。ちょっと説明すると、わしは菌類専門の植物学者じゃ。そしてこのわが家は、製薬会社がスポンサーとなって提供してくれている調査宇宙船なのだ。まあ、助手のみんなは出かけているので、孤独なおじさんというのは当たりだな。」
 「これって建物じゃなかったんですか。」
 俺は着陸時に見た施設の大きさから、てっきりこの土地に建てられた施設だと思っていたのだ。
 「本当に何も聞いていないようだな。この星は湿度も気温も高くほとんどがジャングルだが、特に赤道付近は湿度100%で菌類の天国になっている。その結果、飛んでいる胞子の量がものすごい。健康体なら問題ないが、少し体調が悪かったりすると、体にキノコが生えたり、気道にカビが生えて、悪くすると死んでしまうことがある。」
 「だから念入りに消毒するんですね。」
 「その通り、この宇宙船内はクリーンルーム並みの塵埃密度になっておる。」
 「そうなんですね。」
 俺が施設が宇宙船だったことに感心していると、早速博士が任務の話を始めた。
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