ビクトリーラーメンマンシリーズ第6弾 出世茸

  ビクトリーラーメンマンシリーズ第6弾 出世茸

                           ―修.

 「甲斐さん、ちょっとよろしいでしょうか。」
 俺は課長から声を掛けられ、課長の席の前に立った。今度赴任してきた課長は、なんと二十歳前の男性である。三十近い俺からすると、どう見ても若造というか、青二才にしか見えない。当初は、なんでこんな奴が課長なのかと思ったが、人事の知り合いにこっそり聞いたところでは、この課長は飛び級に次ぐ飛び級で入社前に博士号まで取った秀才らしい。そして、入社後1年もせずに、課長に昇進することになったそうだ。もちろん、そんな秀才がなぜうちのような部署に来たのかは知り合いも謎だと言っていた。まあ、幹部になる前に色々な部署で経験を積むということなのかもしれない。

 まだまだ若い課長とは言え、言葉遣いが丁寧で年上を尊重してくれるのはありがたかった。以前の女性課長はやり手で優秀だったが、そのせいか、たぶん俺はその他大勢の一人ぐらいにしか思っていない節があり、なんとも職場がやるせなかった。
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