ほこたて

 そして、遂にブルドーザーの爪が全て地面から抜け、ポンプ車に吸い寄せられていった。そして2台がぶつかった瞬間、大爆発が発生し、2台があった谷には大きなクレーターができていた。

 「N博士、勝負あったということでいいんですかね?」
 「うーん、ポンプ車がブルドーザーを引き寄せたということですから、ポンプ車の勝ちということでいいでしょうね。」
 「わかりました。『ほこたて』復活第1弾の勝者はA原製作所のポンプ車『ヤカンヅル』となりました。『ほこたて』復活第1弾にふさわしい壮絶な戦いでしたね。視聴者の皆さんにもきっとご満足いただけたことと思います。」
 司会のユーチューバーは見ごたえのあった戦いに満足したのか満面の笑みを浮かべていた。

 しかし、一方のN博士は浮かない顔で話し始めた。
 「いや、戦いの勝者はポンプ車でいいんですが、ブラックホールとホワイトホールが気になりますね。」
 N博士が指さした画面には、クレーターの中央に数mの穴が開いている画像が映っていた。
 「ブラックホールもホワイトホールもまだ活動していて、どちらも制御できていないのではないですか。」
 両社の技術者はうなづいた。

 「ブラックホールに物質を与え続けるとどんどん成長していきますからね。いずれ、地球全体がブラックホールに飲み込まれることになりますね。困りましたねー。」
 N博士は人ごとのように冷静に地球の滅亡についてつぶやいた。
 事態の深刻さにようやく気付いた司会のユーチューバーは最後に付け加えた。
 「どうやら『ほこたて』は今回の第1回をもって最終回となるようです。視聴者の皆様、永遠にさようなら。」

おしまい
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