ほこたて

 両陣営が機械を起動すると、機械の様子が一変した。
 ポンプ車の吸い込み口は大気を吸い込み始めたのか、小さな雷を伴ういくつもの竜巻が発生していた。一方のブルドーザーは、車体が小刻みに振動し、周りに電磁波が出ているのか、空気がコロナ放電を始めていた。あまりの光景ではあったが、司会のユーチューバーは気にしていない様子だった。
 「なんだか、まがまがしいですね。でも、スタートしますよ、3、2、1、スタート。」

 突然、実況席の地面が揺れた。画面では、ブルドーザーの開口から信じられないほど量の土砂が爆発的に噴出していた。一方、ポンプ車の吸い込み口は高さ数十メートルにもなりそうな竜巻が起こり、信じられないほど勢いで土砂を吸い込み始めていた。2台の機械の間は土石流のように土砂が動いていた。

 「すごい。」
 司会のユーチューバーもN博士もあまりの光景にしばらく言葉を失った。しかし、ほどなく司会のユーチューバーは我に返り、実況を再開した。
 「これはすごいですね。どっちも譲りませんね。谷から結構離れているのに、実況席にもすごい振動が伝わってきています。これは勝負がつくんでしょうか。」
 すごい振動の中、N博士もかろうじて答えた。
 「うーん、拮抗していますね。これは引き分けもあるかもしれないですね。」
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