シンデレラ・フルムーン

 しかし、見始めてまもなく、わたしはあまりの内容に驚いてしまっていた。画面のチャートでは、25歳までに第一子誕生、30歳までに第二子誕生と表示されている。子供ができるかどうかなんて神のみぞ知る、だろ。わたしは寝起きのボサボサの頭を掻きながら突っ込んだ。

 画面では、偉そうなおじさんが、国力の維持のためには少子化を食い止める必要があり、このため特定の年齢に達する時点で子供を産むことが国民の義務となった、と言っている。

 「あー!」
 そういえば、数年前に出産法がどうのこうのとネットで騒いでいた。当時は遊び呆けていて気にしていなかつたが、こういうことだったのか。いや待て、「25歳までに第一子誕生」って、生まれるまでに十月十日掛かるのに、もうすぐ24歳のわたしにいったいどうしろと言うんだ。わたしは画面を食い入るように見つめた。ビデオは出来がいいようで、おじさんが即座にわたしの疑問に答えてくれた。
 「もちろん、理想的には24歳までに結婚して、第一子を設けて頂くことができればと思います・・・。」
 「こいつ、なんと脳天気なことを!あと半年で結婚しろってか。相手が要るだろ・・・。」

 いや待て。伊達に授業をサボって遊び呆けていた訳では無い。わたしが所属する、お遊び系テニスサークルの朝陽君なら、もしかしたら結婚してくれるだろうか。いやいや、朝陽君は少し仲がいいとは言え、ストレートで入学して留年もしていないので、卒業のときでも22歳だ。年上からいきなり結婚を申し込まれても困るだろう。かといって他にはあてがない・・。マッチングアプリで探すか・・・。
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