ビクトリーラーメンマンシリーズ第5弾 渡り鳥

 俺は、カウンターに座り、この星で何度食べたかわからない刺身の盛り合わせをつまみつつ酒を飲み始めた。そして、だんだん酔いが回ってくるにつれ女性課長のこと思い出してだんだん腹が立ってきて、いつの間にか店の主人に日頃のうっぷんをぶつけてしまっていたようだ。
 「ご主人、聞いてもらえますか。今度来た女性の上司が冷たいんですよ。頭が良すぎるんですかね。まあ言ってることは正しいんですけどね、物言いがストレートすぎて、いつもガーンとなるんですよ。部下がどう思うかは何も考えてないですね。どう思います。」
 「色んな人が居るからねー。お客さん、難しい上司だと苦労するねー。まあ、ゆっくり飲んで憂さを晴らしてね。」

 店主は他の客へ出す料理を作りながら、片手間に話を聞いてくれていた。
 「まあ、その前はなんとAIロボットが課長で血も涙もないと思ってたんですけど、今度の女性の課長のほうがよっぽど冷血なんじゃないですかね。今回の食材調査の出張も、何か見つかるまで帰ってくるなって、絶対思ってるんですよ。ひどいと思いません。口に出してこそ言わないですけど、これってパワハラですよね。」
 「そうなんだね。上司と仕事は選べないって昔から言うからね。今は大変かもしれないけど、優秀な上司に付いていけば将来出世できるんじゃないの。今はこらえ時かもね。」
 「そんなもんですかね。」
 俺は酒が回ってきてだんだん冷静な判断ができなくなってきており、店主の言うことももっともかも知れないなと思いつつ、次の酒の物色を始めた。

 「お客さん、食材調査って言ってたけど、何か珍しい食い物を探しているのかな。だったら、2、3年ぶりに、とっておきの渡り鳥が1羽だけ手に入ったんで焼いてあげようか。この冬の時期にしか手に入らない、かなりのレアものだからね。」
 「そんななものがあるんですか。あ、ありがとうございます・・・。」
 惑星イーリアスは雪が降るような寒さにはならないが、今は冬の時期である。鳥の種類によっては、気温の変化に合わせて、島々を渡っていくのだろう。俺は渡り鳥なんで珍しくもないのではないかと思ったが、店主の折角の好意なので素直に受け入れることにした。
 「ほらよ。」

 店主が出してくれたのは、広げた羽の幅が10cmほどの小さな鳥の焼き鳥だった。もったいぶって出すところを見ると、ものすごくおいしいのだろうか。逆にものすごくまずいという可能性もある。俺はとにかく食べてみた。渡り鳥は小さいだけに、骨も多く、肉もほとんどついていなかった。それほどおいしいものでもない。
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