戦場の犬

 犬が飛び上がったのである。それも高く。そして目の高さにまで上がったとき、世界が輝いた。そして今はその放物運動の頂点でシルエットを作った。衝撃。おれは吹き飛ばされた。

 爆発か・・・犬は・・・そして爆発が収まった後、俺はあたりを見まわした。犬は無残に寸断され、肉片となって散らばっていた。
「身代わり・・・俺の身代わりになってくれたのか・・・俺は」おれはしばらくあっけに取られ言葉を失った。

「しかし・・・なぜ、なぜこんなことを・・・せっかく助けてやったのに。おれが生き残るのも、お前が生き残るのも大した違いはないじゃないか。むしろ、自由なおまえが生き残った方がよかったのに。ほんとにドジな犬だよ、お前は」

 兵士、人を殺すことが商売である兵士としての自分に多少のむなしさを感じながら、ドジな犬の墓でも作ってやろうと俺は立ち上がった。

 その時、信じられぬことが起った。バラバラになった犬の体がぼんやりと光り輝き、一ヵ所に集まりだしたのである。
 再生、それはまさしく再生であった。そしてわずかに時間が経過したのち犬は完全に元の姿に戻った。そしてこちらを見た。
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