２ヶ月近くの宙航を経て俺は体調を崩すことなく火鍋の惑星に着陸することができた。乾燥ランチプレートも、コールドスリープ活き造り定食もまあまあの味で満足できるものだった。以前は、端っこの炭化した明太子でご飯を食べるという宙航をしていたことを考えると出世したものだ。

　火鍋の惑星は、活火山が多く、溶岩流が流れている場所もあり、まさに火の惑星というべきものであった。海があり、海産物は捕れるものの、地上に耕作地は少なく、結果として海鮮火鍋が名物となっており、惑星自体がこの俗称で呼ばれるようになっていた。宙港は都市に隣接して設けられており、俺は程無く食堂街へたどり着いた。食堂街は、こじんまりした店が密集した雑然としたものだった。看板には赤や緑の唐辛子や「麻（マー）」とか「辣（ラー）」とか、いかにも辛そうな絵や文字が並び、陳列ケースも赤い色の料理が数多く並んでいた。通りには香辛料の匂いが充満していた。