ビクトリーラーメンマンシリーズ第4弾 火鍋ドラゴン

 俺は火鍋ドラゴンでの食事を終了し、周りの市場などを回って珍しい食材を探したが、これといったものは見つけられなかった。俺は調査船に戻り、ドラゴンスープをAIロボットの課長へ報告した。

 「コーホー、火鍋、おいしかったですか、コーホー。」
 「はい、すごい炎の3つ口コンロで、一気に仕上げるからでしょうか。炎は使っていないコンロから数メートル上がっていました。辛いけど、とってもおいしかったです。ついでに、料理の後で、3つのコンロからトカゲみたいなのが交互に頭を出すショーがあって、そっちもかわいくて楽しめましたよ。」
 「コーホー、コーホー、コーホー・・・。トカゲですか・・・、コーホー。炎、3つ・・・、コーホー。」
 「はい。3匹の爬虫類が色違いのスカーフを巻いてて、かわいく出たり、入ったりして・・・。」

 俺が言葉を続けているのに、課長が割り込んできた。
 「コーホー、甲斐さん、お疲れ様でした。出張完了です。もう帰ってきていいです、コーホー、コーホー。」
 「え、俺、何かやらかしました?」
 俺は不安になって問いかけた。いつも会社の意図はわからない。AIロボット課長になってからは、さらに意図も感情も何もかもわからなくなってきていた。何か思わぬところで、大失敗している可能性もあった。

 「コーホー、いえいえ、お手柄です。初日で見つけましたね、コーホー。さすが、甲斐さんです、連勝じゃないですか、コーホー。」
 「え、どういうことですか・・・。」
 「コーホー、甲斐さんが見たのは、伝説の三つ首ドラゴンに違いありません、コー。実在していたということですよ。ショーの途中は炎を出さないようにしてカモフラージュしていたかもしれませんが、コー。コンロの下にバーナーがありましたか。たぶんなかったと思います、コー。おそらく、キッチンの下に三つ首ドラゴンがいたはずです。そして上に向かって炎を吐いていたということです、コーホー。」

 そういえば、店主が奥に引っ込むときに、爬虫類は回収していない。爬虫類はコンロに下に入ったままだ。課長の言う通り、3匹の頭は、中でつながっていたかもしれない。店主は、伝説の三つ首ドラゴンを捕まえて、普通に芸をさせていたということか。
 「なんか、すごい話ですね。」
 俺は全容が理解できないまま帰路に着くことになった。

 その後、俺と入れ替わりに、会社からは人事担当が派遣され、火鍋ドラゴンの店主は希少生物の探索と飼育のスペシャリストとして、我がビクトリー・ラーメン社に雇うことになったらしい。希少生物というところが、我社の戦略の一部に寄与するということだろうか。

 食材の発見には至らなかったが、俺の出張目的は無事達成されたようだ。俺は、3つの頭から盛大に炎を吐くドラゴンの姿を夢見つつ、再びコールドスリープに入っていった。

おわり
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