変身

 これは大変だ。なんとかして元の姿に戻らないといけない。俺はひらめいた。もう一回変身してみればどうだろう。前後に開く足の左右を変えて、両腕を逆方向に回せば元に戻るのではないか。

 「へんしーん!!!」
 周囲が明るく光った。成功か?俺は急いで腕を胸に当ててみた。
 「ガチッ」
 金属ともプラスチックともつかない鈍い音がした。
 「ん?」
 見下ろすと胸も腕もパステルカラーのプロテクターで覆われていた。
 「え?」
 俺は再び急いでユニットバスに行き、鏡をのぞき込んだ。そこには特撮ヒロインの精悍なマスクが映っていた。マスクやプロテクターには光沢のある紫のラインが入っている。今度は特撮ヒロインになってしまったらしい・・・。

 俺は全身を見るため、スマホで動画を撮影し、いくつかポーズを取ってみた。なかなかいいデザインであった。女性らしさが強調されたスタイルもいい。背も少し伸びているように感じられた。いやいや、感心している場合ではない。

 この格好では外にも出られない。部屋から出た瞬間、写真を撮られてSNSに拡散されそうだ。もし外に出たとしても、どうやって暮らしていけばいいんだ。悪の組織がいて、それをやっつけてお金がもらえるならいいが、そんなに都合のいいことはないだろう。特撮ドラマに出演すればいいかもしれないが、このデザインがドラマのニーズに合うとは限らない。

 「そうだ、脱いでしまえばいいんだ・・・」
 マスクやプロテクターを脱げば少なくともさっきよりもスタイルのいい女性になっているのではないか。この姿のままよりはずっといいだろう。俺は、マスクやプロテクターに留め金かマジックテープがないか探した。しかし、どこにも見つからなかった。

 「脱げない・・・」
 探している時にうすうす気がついたが、プロテクターには触覚があった。体と一体化してしまっているようだ。
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