変身

変身
                          一修.

 「ままならない。」
 都会の国立大学に入学し、一人暮らしを始めた俺は狭い1ルームの部屋で再びつぶやいた。閉鎖感の強い田舎から出てきて、バラ色のキャンパスライフを夢見ていたが、その夢はあまりにも楽観的だった。

 何より金がない。親からの仕送りだけでは生活は苦しく、すき間時間はバイトせざるを得ない。そして俺の入った工学部には当然ながらほとんど女性がおらず、女友達と楽しくひと時を過ごすといったこともない。ドラマでよく見る、授業が終わったら男女のグループで飲みに行ったり、カラオケに行ったりといったシーンはあり得ない。

 ましてや、彼女と二人でイチャイチャなどといったことは金輪際起こりそうにない。金と女っ気がないだけでなく、俺は背も高くないし、どちらかというとぽっちゃり体形で、分厚い眼鏡もかけており、到底モテそうにない。それでも在学中に一人くらい彼女ができればと思ってはいるのだが・・・

 「こんなはずじゃなかったんだが・・・」
 俺は彼女とイチャイチャするシーンを想像してだんだん悶々としてきた。彼女はできないにしても、もし透明人間にでもなれれば、女性の着替えなどを覗けるのではないか。俺の妄想は暴走してきた。
 まあ、こんな妄想をしてもむなしいだけだ。俺は気分を変えるため最近始まった特撮ドラマをスマホで見ることにした。
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