俺が保冷バックを取り出し、立ち上がろうとしたとき、再びジュウイチコが話しかけてきた。
　「谷川様、もし少しお時間を頂戴できましたら、谷川様の転職につきましてご提案があるのですが・・。」
　「え、なんだって。」

　俺は想定外の内容で思わず聞き返した。
　「谷川様のＳＮＳやネットサーフィン の閲覧履歴、お勤めの会社の同僚の皆様の書き込みなどから、谷川様はそろそろ転職をお考えではないかと分析いたしました。谷川様の経歴、実績などから判断しまして、谷川様のご希望される土地で、現在の１．３倍の年収のお仕事があります。また、サービス残業のようなものはありませんので、業務時間は２０％程度減る見込みです。もしよろしければ、先方の会社の情報と当店が契約する転職エージェントをご紹介いたしますが、いかがですか。」

　今日は驚き続きだが、これには最も驚いた。俺の転職願望までお見通しなのか、しかも好条件の転職先と言われると聞いてみないわけにはいかない。俺は説明を頼んだ。ジュウイチコは労働条件や担当業務、さらに上司の性格、職場の雰囲気など細かい説明を続けた。そんなことまで判るのかと驚きつつも、聞けば聞くほど魅力的な会社で条件も良い。俺は後日メールで詳細な情報をもらい、面接を受けるかどうか、返事をすることにした。