ふわっと

 しかし、ようやく一つの統一した見解が形成された。わざわざ深淵の宇宙空間を渡って地球に来るということは何か目的があり、それは平和交渉か、侵略のいずれかであり、地球全体として万全の対策を打たなければならない。この見解に異論を唱える者はなかった。

 先進諸国は、今までの軋轢も互いの利害関係も棚上げし、連携して宇宙戦艦や攻撃兵器を急造した。民間工場は兵器製造のためすべて徴用され、民間物資が不足し、暴動が発生した。しかし、地球防衛のためには多少の犠牲は止むを得ないという世論の下、徐々に鎮圧されていった。民間の宇宙ステーションも快適性を犠牲にして、すべて兵装がなされ臨戦態勢となった。

 紛争地域の国に対しては、地球防衛の御旗の下、先進諸国が軍事侵攻し、逆らう国や団体は一気に制圧した。そして10年という極めて短期間で、史上初の地球統一政府が成立した。地球統一政府は着々と準備を進めた。宇宙人の船の兵装が予想できないため、準備できる最大限の火力が準備された。

 一方、平和交渉を想定したファーストコンタクトの準備にも余念がなかった。世界中の言語学者が集められたのはもちろん、世界中のスーパーコンピューターが徴用され、史上最強の言語解析体制が取られた。相手がどんな手段でコンタクト取るかも予想がつかないため、全周波数の電波、全スペクトルの光波、音波、重力波などのセンサー衛星が到着予定地点に配置された。
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