ふわっと

 世界に衝撃が走った。今までもUFOや宇宙人に遭遇したといったまことしやかな話はあったが、いずれも信ぴょう性を欠くものであった。しかし、今回は観測衛星からの写真からも、天文学者の記者会見からも、他の宇宙文明の人工物の接近であるということは疑いようもない事実だった。

 もしかすると、人類初のファーストコンタクトになるかもしれない。多くの議論が交わされた。紡錘型の人工物は宇宙船なのか、何か目的があるのか、宇宙人が乗っているのか、地球が征服されるのではないか。宗教家は0デイでの世界の破滅を訴え、神に祈るよう説いた。多くの予言者も現れた。

 各国政府も単独で、または連携して、シミュレーションを展開した。もし人工物が宇宙船なら、どんな目的が想定されるか、平和交渉か、侵略か、そのメリットは何か。長さ10kmの人工物が宇宙船だとしたら何ができるか。そもそも目的があるのか。例えば、サイズは大きいが実は救命艇で地球に助けを求めに来たといったこともありえる。いやいや、人工物自体が宇宙人という可能性だってある。白熱した議論が交わされたが、あまりにも判断材料が少なすぎて、確定的な結論は導き出せなかった。
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