ビクトリーラーメンマンシリーズ第3弾 砂の惑星

 「それでは本日のメインでございます。本日はタイの生き造りとなっております。和洋折衷で恐縮ですが、最高の鮮度のタイをお楽しみください。」
 「えっ!タイだって?」

 俺は男が運んできた料理を見て驚いた。捌かれたタイは生きていた。この砂漠で生きたタイ・・・。海はあるが塩分が強すぎて魚は住めない。

 このレストランは養魚場を持っているのか。しかし、水は淡水化施設で製造されているのに、タイを養殖できるほど供給されるものだろうか。何より宙港のある都市からはかなり離れている。先ほど男が話していた川にすごい量の水が流れているのだろうか。地図にはそんな川はなかったが・・・。俺はストレートに尋ねた

 「いったい、どうしてタイの生き造りが出せるんですか。」
 「はい、これも本当は秘密にしたいところなんですが、おそらく一般の方には技術的に難しいと思いますのでお教えします。実は魚をコールドスリープで運んでいるんですよ。そして、小さな水槽で1、2匹だけ活動させています。そうしないと身が小さくなっちゃうんで。」

 魚のコールドスリープだと、なんてすごい技術だ、俺は心の中でうなった。人間は、必要に駆られて、宇宙船内では宙航のほとんどの時間をコールドスリープで過ごす。しかし、コールドスリープには危険が伴うので、体調のモニターだの、栄養や水分の補給などかなり高度な技術が使われている。それを魚用にしたのか。男の言う通り、生物学の知識と、かなりの技術力がないと真似できないだろう。

 今回の調査の目的はこれだったのではないだろうか。会社から支給された調査宇宙船のおかげで、砂漠を何日もさまようことなく、目的が達成できたかもしれない。俺は早くも出張が完了したように感じて、新鮮なタイの生き造りを堪能した。
7/9ページ
スキ